<b>華麗な映像・しっかりとしたストーリーで料理の匂いを伝える</b>
視覚化料理を素材にした映画は、どうしても限界がある。料理そのものの匂いを、どうやって視覚化するかに、苦悩するからだ。
しかし、華麗な映像とサウンド、しっかりとしたストーリーで嗅覚を視覚化し、観ているだけでヨダレが出てくる映画がある。漫画家ホ・ヨンマン原作の映画『食客』だ。

キム・ガンウ の最新ニュースまとめ

韓国最高の料理店<雲岩亭>。この店の料理人でライバル同士であるソンチャン(キム・ガンウ)とポンジュ(イム・ウォニ)は、後継者の席を賭けて対決を繰り広げる。

勝負のための素材は“フグ”。ソンチャンは真心をこめて料理を作ったが、料理評論家たちはソンチャンの料理を食べてフグ中毒を起こしてしまう。この事件にショックを受け、故郷に帰ってしまったソンチャン。
そうして5年という歳月が過ぎ、後継者ポンジュが運営する<雲岩亭>は、企業型料理店へと成長を遂げる。そんな中、国内トップの宮中料理人を選ぶ大会が開かれ、ソンチャンとポンジュは宿命ともいえる対決を繰り広げることになるのだが…。

11月1日に公開された『食客』は、人々に食べ物とは何であり、またどうあるべきかを問う映画だ。もちろん、芸術的次元の、レベルの高い話題を問いかけているのではない。『ベサメムーチョ (Kiss Me Much)』と『僕の、世界の中心は、君だ。』を手がけたチョン・ユンス監督の新作映画の外側は、ソンチャンとポンジュの対決ドラマ。しかし、フグ、ユッケ、九折坂(クジョルパン:9種類の材料を使って作る料理、またそれを入れる器)、テンジャンチゲ、ラーメンに至るまで、映画で紹介されるそれぞれの料理が、それぞれのメッセージを持っている。

「世界のおいしい料理の数は、世界中のお母さんの数と同じだ」というソンチャンの言葉には、様々なことを考えさせられる。このセリフで、母親のテンジャンチゲを思い出さない観客はどれくらいいるだろうか。料理には人々の気持ちが込められ、そういう時にこそ世界で一番おいしい食べ物になるという監督の哲学が、説得力を持って感じられる。
しかし、このようなメッセージにも関わらず、原作の膨大なストーリーを圧縮しようとした分、2人の主人公の対決という単純な対立構図は、多少残念に思われる部分だ。

細かい描写や設定の所々でありきたりな表現を使いながら、楽な慣習に従ったのが目立った。ポンジュというキャラクターをあまりにも戯画化してしまい、ジャンルの慣性に頼った部分もまた、少し負担に思える設定だ。
同じホ・ヨンマン原作漫画を映画化したチェ・ドンフン監督の『イカサマ師(タチャ)』は、躍動感溢れる人物構成で、指摘すべき部分がなかったという評価を得た。これを意識したのだろうか。チョン・ユンス監督は試写会直後に、「『イカサマ師』よりも面白いと言った発言を取り消したい」とも明かした。

一言つけ加えるとしたら、映画が終盤に向かう頃になると、画面に出てくるラーメンをすする音さえもが、堪えきれない空腹感となって迫ってくるということ。観覧前にはしっかりとお腹を満たしておくことをお勧めしたい。

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