ワールド(World)の技術開発会社ツールズ・フォー・ヒューマニティ(Tools for Humanity、以下TFH)は、「サイバーセキュリティ啓発月間」にあたる10月、AI技術の進化により拡大する新たなタイプのサイバー犯罪に対応するため、個人情報保護を中核とした「人間証明(Proof of Human)」技術の重要性を強調した。

今年、ディープフェイクを利用した詐欺被害が前年比162%増加する見通しで、ディープフェイク関連ファイルの数は2023年の約50万件から2025年には800万件に急増すると予測されている。

AIによって複製された音声が家族を装って金銭を要求したり、偽の役員映像を使って従業員に数百万ドルを送金させるなど、巧妙化する詐欺手法が企業・個人の双方を脅かしている。

一方、TFHが今年3月に国内ゲーマー800人を対象に実施した調査では、79%が「ボットによるゲームの公平性侵害」を懸念し、83%が「人間検証技術の導入が必要」と回答。さらに91%が「AIと人間を区別する仕組みは今後不可欠になる」と答えた。

TFHはサイバー犯罪が多様な形で拡散していると分析し、主に以下の3つの新たな脅威に警戒を呼びかけている。

・合成なりすまし(Synthetic Impersonation)
オンライン上の動画や音声がAI複製の標的となり得る。実データと偽データを混ぜた「合成身元」は数年発見されない場合もあり、電話やビデオ通話の信頼性が揺らいでいる。

・偽プロフィールによる信頼危機(Trust Crisis Fueled by Fake Profiles)
デートアプリ利用者の10〜15%が偽プロフィールと推定され、ビジネスネットワークではAI生成履歴書が増加。レビューサイトではボットによる虚偽レビューが企業の評判を崩壊させる恐れがある。

・偽りの多数派(False Majorities)
ボットアカウントがコメントや投票結果を操作し、虚偽の世論を形成。少数の人間が数千のアカウントを操ることで、本物の意見と操作された意見の区別が難しくなっている。

TFHはこうした状況を踏まえ、次世代セキュリティの基盤として「固有の人間性の証明(Proof of Humanity)」を構築すべきだと提言。以下の4原則を掲げた。

・プライバシー中心の検証(Privacy-First Verification):個人情報を露出せず、人間であることを暗号学的に証明する。

・普遍的相互運用性(Universal Interoperability):一度の検証で複数サービス間の信頼を維持しつつ、クロス追跡を防止。

・不正防止設計(Fraud-Resistant Design):パスワードのように盗難・複製されることのない人間性検証を採用。

・グローバルアクセシビリティ(Global Accessibility):デバイスや環境を問わず、誰でも利用できる仕組みを確立。

この理念を実装した技術の一つが「ワールドID(World ID)」だ。ユーザーが一度匿名で人間であることを証明すれば、他者との相互信頼が構築され、ボットや詐欺を排除した安全なデジタル交流が可能になる。

TFH韓国支社のパク・サンウク支社長は、「AIの進化で人間の行動が容易に模倣される時代、セキュリティはファイアウォールやパスワードの枠を超えなければならない」と指摘。「既存の認証は『パスワードが正しいか』『SMSを受け取れるか』しか問わないが、それが“人間”かどうかは確認していない」と述べた。

さらに「技術が人に奉仕するためには、プライバシーを守りながらも普遍的に人間性を証明できる新しい仕組みが不可欠だ」と強調した。
Copyright(C) BlockchainToday wowkorea.jp 118