朝鮮語を表記するための表音文字「ハングル」には「偉大なる文字」という意味がある。その起源は1443年に李氏朝鮮第4代国王のセジョン(世宗)が公布した「訓民正音」で、世宗が朝鮮語に固有の文字を創るために考案した。
ハングルは1876年以降、民族意識の高揚と共に広く用いられるようになる。1886年に創刊された朝鮮の週刊新聞「漢城周報」は、朝鮮の新聞として初めてハングルを採用した。
1948年に韓国はハングル専用法を制定し、公文書はハングルで記すことを決定した。一方で、日本の統治時代を想起させるとして漢字表記を廃止する動きが加速し、1970年にはパク・チョンヒ(朴正熙)政権の下で、漢字廃止宣言がなされた。現在では、新聞の一部表記を除き、韓国社会において漢字はほとんど姿を消している。
10月9日の「ハングルの日」は、ハングルの元となった訓民正音の公布を記念して制定された。「ハングルの日」の起源は、1926年の11月4日に訓民正音の公布480年を記念して式典を行ったのが始まりとされる。その後、10月9日が「ハングルの日」と制定され、1970年からは祝日に。一時期、平日となるも、2013年からは再び休日となっている。
今年も、「ハングルの日」の9日、韓国国内では、関連する様々なイベントが開かれた。ソウル市内では世界35カ国から約400人の外国人が参加し、ハングルの揮毫(きごう)を体験するイベントが開かれた。格安航空会社のチェジュ(済州)航空は、漢字語や外来語ではなく、韓国固有の言葉「純韓国語」で機内アナウンスを行った。2008年から行っている取り組みで、ことしは18日まで続けるという。
一方、韓国の人気ガールズグループ「BLACKPINK」のJENNIE(ジェニー)は、「ハングルの日」を記念し、自身が制作したハングルフォントを公開。韓国の伝統美学と現代的な感覚を融合させたフォントに仕上げており、今後、様々なコンテンツの制作に活用される予定だ。これを伝えた韓国メディアのスポーツソウルは「今回のプロジェクトは、K-POPアーティストが音楽に留まらず、韓国文化全般の世界的な拡散に貢献する新たなモデルを示したと評価されている」とした上で、「国際的な影響力を持つアーティストが、自らハングルの魅力を伝える文化事業に取り組んだことは大きな意味を持つ」と指摘した。
李在明大統領は「ハングルの日」の9日、SNSにメッセージを投稿。李氏は「ハングルはわが民族の知恵と歴史が凝縮された文化遺産そのものだ」とした上で、「特に当時の支配層の反対を押し切り、『民が容易に身につけ毎日使うように』作られたハングルには、民主主義と平等、国民主権の精神が深く染み込んでいる」とした。また、李氏は、昨今の世界における韓流ブームに関連し、「世界の人たちの心をとらえている韓流ブームも、我々の考えと感情を過不足なく表現するハングルの力から始まった」と指摘。「世界の人々が我々の小説を読み、歌を口ずさみ、映画やドラマで泣き、笑う『文化強国・大韓民国の夢』が、ハングルを通じて現実となっている」と強調した。
今月末には南東部の慶州でAPEC首脳会議が開かれるが、キム・ミンソク首相は、9日に行われた「ハングルの日」の記念式典で、「今回のAPECがこれまでの全ての会議を超えるものとなるよう、最終準備に総力を挙げている」とした上で、「ハングルをはじめ、韓国文化の創造性と優秀性を広く発信する様々なプログラムを準備している」と明らかにした。また、今後、世界87カ国、252カ所で韓国語の教育と韓国文化の発信を行っている世宗学堂をさらに増やすほか、ハングルを活用した商品の開発、展示、広報活動を政府として支援していく方針も示した。
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