ドナルド・トランプ米大統領は先月25日、ホワイトハウスの執務室で記者たちにこのように述べた。パレスチナを国家として認める国際社会の動きが強まる中、イスラエルが西岸併合を検討しているという報道があり、それに対してトランプ大統領は、西岸併合は認めないという線引きをしたのだ。戦争中のガザ地区とは異なるアプローチを取るという意味であり、イスラエルが1967年の第三次中東戦争を通じて手に入れた西岸地区が、今日においても依然として重要な懸案であることを示している。
西岸地区はヨルダン川の西側(ウェスト)にある丘陵地帯(バンク)という意味である。面積はイスラエル領土のおよそ4分の1にあたる5,640キロ平方メートルで、ガザ地区より15倍広く、京畿道全体の面積のおよそ半分に相当する。パレスチナの暫定行政首都も、西岸地区北部の都市ラマッラーに位置している。
イスラエルの右翼関係者は、西岸地区を聖書に登場する「ユダとサマリア」と呼んでいる。それほどまでに西岸地区は、地理的にユダヤ人のアイデンティティと密接に関連している。このため、イスラエルでは極右勢力を中心に、西岸には聖書的・歴史的権利があるとして、イスラエルの領土に併合すべきだという主張が根強く存在する。
「われわれの祖先の遺産だ。ここは我々の土地だ」(2017年、西岸北部の入植地50周年記念行事)、「我々はインドに来た英国でも、コンゴのベルギー人でもない。西岸地区は祖先の土地だ」(2011年、米国議会での演説)など、ベンヤミン・ネタニヤフ首相はこれまで、ユダヤ人入植地と西岸地区の併合を公約として掲げてきたが、トランプ大統領の第1期政権下の2020年に行われた、いわゆる「アブラハム合意」によるアラブ首長国連邦(UAE)およびバーレーンとの関係正常化の過程で、それは保留された。
また、西岸地区はヨルダンと国境を接しており、イスラエルにとって軍事的防衛線を確保できる戦略的要衝でもある。
西岸地区の法的地位については、国際社会と国連、イスラエルの主張が食い違っている。国際社会と国連は、西岸地区をイスラエルが1967年の第三次中東戦争によって占領したと見なしている。一方、イスラエルは、西岸地区は紛争地域にあり、国際法上の「占領地」ではないと主張している。
西岸地区をどう定義するかによって、ユダヤ人入植地の合法性の解釈が分かれる。西岸地区を「占領地」と見なせば、イスラエルによる入植地建設は、2016年の国連安全保障理事会決議第2334号(イスラエル入植地を違法と規定)などを根拠に国際法上違法となる。これを「紛争地」と見なせば、入植地建設は正当化され、西岸地区をイスラエルに併合すべきだというイスラエル極右関係者の発言にも重みが加わる。
それにもかかわらず、イスラエルは事実上、西岸地区の大部分を支配下に置いている。1993年のオスロ合意により、西岸地区はA地区(全体面積の18%、パレスチナが統制権と行政権を保有)、B地区(22%、イスラエルが統制権、パレスチナが行政権をそれぞれ保有)、C地区(60%、イスラエルが統制権と行政権を保有)に分けられた。ユダヤ人入植地は主にC地区に集中している。
このようにイスラエルが実質的に西岸地区を支配しているにもかかわらず、併合を主張する理由は、政治的・外交的目的にあると考えられる。これは、パレスチナを国家として認める「二国家解決案」を受け入れないという明確な意思表示であり、同時にネタニヤフ首相をはじめとする右翼連立政権にとっては、国際社会との交渉における交渉カードであるとともに、国内政治において保守層の支持を結集する手段となりうる。これまでネタニヤフ首相は、併合発言を通じて中東諸国に圧力をかける効果を狙う一方、連立政権内の強硬右派勢力の支持を確保してきた。結局、併合主張は単なる領土問題にとどまらず、イスラエルの外交と内政が交差する多層的なカードとして機能しているのである。
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