韓国の元慰安婦とその遺族の計20人が、日本政府に総額30億ウォン(約2億9000万円)の損害賠償を求めた訴訟。ソウル中央地裁は21日、原告の訴えを却下する判決を言い渡した。

日本側は「国家の行為や財産は他国の裁判所で裁かれない」とする国際法上の「主権免除」の適用を求めていたが、地裁はこの「主権免除」を認めた。1月には同様の訴訟で原告が勝訴しており、今回は逆の判断が示された形となった。

しかし、原告側の弁護士は、「控訴を検討する」としており、問題の解決にはまだまだ程遠い状況だ。韓国政府はこの日、地裁が判決の中で断じた「被害者の回復は、韓国政府が日本との外交交渉などの努力で解決しなければならない」との指摘を受け止めなければならない。

慰安婦問題をめぐっては、2015年12月に日韓両政府がこの問題に対して「最終的かつ不可逆的な解決」を確認。安倍晋三首相(当時)が「おわびと反省」を表明し、日本政府は10億円を拠出し、元慰安婦への支援事業を行うことなどで合意した。

2016年にはこの合意に基づき、韓国政府が元慰安婦を支援する「和解・癒し財団」を設立し、元慰安婦らに支援金の支払いを進めた。しかし、韓国の政権交代のあと2018年に韓国政府は財団の解散決定を表明。翌2019年7月に解散した。

ことし2021年1月には、元慰安婦12人が日本政府に1人あたり1億ウォンの損害賠償を求めた訴訟で、ソウル中央地裁が全額賠償を命ずる判決を言い渡した。日本側はこの訴訟でも主権免除の原則を理由に、訴訟に出席も控訴もせず、判決が確定した。

韓国ではこれまで、元慰安婦訴訟、元徴用工訴訟と、日本政府が「解決済み」としてきた主張を覆す司法判断が続いてきた。しかし、21日の慰安婦訴訟の判決は、国際慣習法や韓国の判例に照らして、日本政府が主張する主権免除を認める判断を下しており、判決は極めて妥当と言える。

判決を受け、韓国外交部の当局者は、具体的な言及は避けつつも日本政府に対し「自ら表明した責任痛感と謝罪、反省の精神に合致する動きを示すことを求める」と述べた。また、チョン・ウィヨン(鄭義溶)外相は「日本政府は、韓国が合意を守らず国際法違反だとし、理屈に合わない主張を続けている」などと批判している。

しかし、韓国政府は、地裁がこの日の判決で「被害者の回復は、韓国政府が日本との外交交渉などの努力で解決しなければならない」と指摘したことを受け止め、解決のために動くべきだ。韓国政府がいつも強調する「被害者中心主義」に基づいて本気でこの問題の解決を目指すのならば、一刻の猶予もないはずだ。

裁判には時間がかかり、今回の訴訟も元慰安婦らが提訴したのは2016年12月のことで4年以上の時間を要してきた。元慰安婦たちが高齢となっていることからも早期の解決が望まれる。

難しいことではなく、当たり前のことだけだ。1965年の韓国と日本との約束を、2015年の韓国と日本との約束を守ることだ。
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