被害者は、嶺東放送江陵放送局(現・江陵MBC)記者として勤務中に搭乗した旅客機がハイジャックに遭い、北朝鮮に拉致された男性。ソウル中央地裁は25日、この男性の家族8人が江陵MBCを相手取り起こした退職金・賃金・遺族補償金請求訴訟で、12万5637ウォン(約9410円)の支払いを命じる原告一部勝訴判決を出したと明らかにした。
一部勝訴とはいえ、極めて少ない支払額と、原告側に負担させた訴訟費用を考慮すると、事実上の敗訴といえる。支払額は退職金に年5%で計算した39年間の利子を加えたものだ。事件当時、入社1年6か月目だった男性の月給は2万2050ウォンで、休職処理されるまで2年間の退職金を計算すると、4万2589ウォンとなる。
裁判部は、退職金請求時効の効力を認めたが、物価上昇率を反映すべきとの原告側の要求は受け入れなかった。退職金以外の未払い賃金、休業補償金、遺族補償金、慰謝料などの請求はすべて棄却した。拉致は会社側に責任のない不可抗力の災害であり、遺族補償の根拠となる労働基準法上の「業務上死亡」とみることは難しいと判断した。
朴基柱(パク・キジュ)裁判長は、「民放上の補償責任を問うのは困難と判断した。北朝鮮拉致被害者に対する補償問題は、国レベルで別途話し合うべきものだと考える」と述べた。
大韓航空機YS-11ハイジャック事件は、1969年12月、江陵発ソウル行きの大韓航空旅客機YS-11が大関嶺上空で北朝鮮諜報員によりハイジャックされた事件。乗客・乗務員合わせて51人が搭乗しており、39人が翌年に板門店を通じ帰還したが、この記者の男性を含む12人が除外された。生死が確認できず失踪(しっそう)扱いとなっていたこの男性は、2005年に裁判所から「拉致から5年後の1974年12月に死亡したものと見なす」と宣告された。
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