金氏には世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の元幹部から不正に高級バッグを受け取った疑いなど、計16件の疑惑がもたれている。金氏をめぐるこれら疑惑を捜査している特別検察官は先月、金氏を出頭させて取り調べ、13日逮捕した。金氏は容疑をおおむね否認したことが確認されている。
金氏といえば、夫の尹氏が前回2022年の大統領選に出馬を表明したころから注目を集めてきた。夫が選挙活動に奔走する中、金氏に経歴詐称疑惑が浮上。金氏が2006年にスウォン(水原)女子大学の教授採用に応募した際、提出した志願書に虚偽の経歴と虚偽の受賞記録を記載していたと報じられ、その後、次々と経歴詐称が明るみとなった。
競争社会の韓国では、有力者やその家族の経歴に対し世論は厳しく、また当時、大統領選候補の夫が「公正」を掲げて選挙戦を戦っていたこともあり、金氏はまだこの時は「大統領候補」の夫人でありながら、思わぬ形で注目を浴び、厳しい批判にさらされた。
その後開いた記者会見で金氏は、「良く見せようと膨らませ、間違って書いたものもある」と事実を一部認めた上で、「あまりに恥ずかしいことだった」などと謝罪。会見では尹氏との出会いなどについても赤裸々に語り、かえってその純粋無垢な姿が有権者から好感を得た。
夫が2022年5月に大統領に就任すると、ファーストレディーとしての金氏の一挙手一投足にも関心が集まった。ネット上にできたファンクラブは、アイドル並みの会員数を誇り、登録者数は今でも8万人を超えている。
しかし、金氏をめぐって様々な疑惑が浮上し、尹氏は在任中、野党から厳しい追及を受けた。また、金氏の疑惑が尹氏の支持率低下の一因にもなった。昨年11月、尹氏は会見で「私の周囲のことで国民に心配をおかけした。心からおわび申し上げる」と謝罪した。
金氏には、自動車会社の株価操作に関与した疑惑や、知人から高額なブランドバッグを受け取った疑惑が指摘された。当時、野党だった「共に民主党」は、金氏をめぐる疑惑を追及するため、政府から独立した特別検察官に捜査させる法案(キム・ゴンヒ特検法)の成立を目指した。だが、尹氏は拒否権を行使した。
その後、尹氏は昨年12月、「非常戒厳」を宣言。政治的、社会的混乱は大きく、尹氏はその後、弾劾訴追され、ことし4月、罷免された。尹氏が「非常戒厳」を宣言した背景には、妻の金氏が抱える数々の疑惑があったとの見方もある。妻が窮地に追いやられている状況が、尹氏に戒厳を決断させる最後の一押しになったと指摘されている。
政府から独立して捜査を行う特別検察官は、金氏をめぐる複数の疑惑について捜査を進めており、先月29日、起訴した。金氏は起訴されるまで5回にわたる特別検察官の調べに対し、ほとんどの供述を拒否。一部の疑惑については関与を全面的に否認しており、公判では無罪を主張するものとみられている。一方、通信社の聯合ニュースは「金氏が犯罪により得た収益は計10億3000万ウォン(約1億1000万円)と算定される」と報じた。
起訴後、金氏はコメントを発表。「国民に心配をかけたこの状況が本当に申し訳なく、毎日が苦しいだけ。最も暗い夜に月の光が明るく輝くように、私も自分の真実と心を見つめながら、この時間を耐えたいと思う」と心境を吐露した。
一方、夫の尹氏は内乱罪で公判中で、今後、大統領経験者と配偶者が共に裁判にかけられることになった。金氏は先月、逮捕後の取り調べの休憩中、「また夫と暮らせるだろうか。もう一度会えるだろうか」と漏らしたという。
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