米韓合同軍事演習には、毎回、北朝鮮が激しい反発を見せる。今年3月に実施した演習の前にも、北朝鮮は国営・朝鮮中央通信を通じて論評を発表。「朝鮮半島に情勢悪化の嵐をもたらす」と非難した。また、演習の規模が前年より拡大しているなどと主張し、「米国が軍事的な力の示威行為で記録を更新するならば、我々も当然、戦略的な抑止力の行使で、記録を更新するしかない」とした。また、北朝鮮外務省は「公報文」を出し、合同演習は「物理的衝突を誘発しかねない危険な挑発的妄動だ」として「最強硬対応」を予告。演習初日の同月10日、南西部の内陸から黄海に向けて弾道ミサイルを発射し、対抗した。
韓国は、ユン・ソギョル(尹錫悦)前政権では対北強硬路線を取り、軍事演習も規模を拡大させたが、6月に発足したイ・ジェミョン(李在明)政権はこの路線から転換を図ろうとしている。先月、韓国軍は南北軍事境界線付近で行ってきた対北朝鮮宣伝放送を中止した。放送は大スピーカーを使って行われ、韓国の民主主義制度が北朝鮮の政治制度よりも優れていることをアピールしたり、北朝鮮の体制批判、韓国や海外のニュース、韓国の歌などを流したりしてきた。放送は北朝鮮軍の兵士に与える心理的影響が大きいとされる。前政権が昨年、6年ぶりに再開させた放送の中止は、南北の緊張緩和と対話に向けた李政権のメッセージと受け止められた。
これに対応するように、北朝鮮も韓国に向け流してきた「騒音放送」を中断したが、北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)総書記の妹、キム・ヨジョン(金与正)朝鮮労働党副部長は、先月28日に出した談話の中で、韓国が取った放送中止措置に触れ「やるべきではなかったことを元に戻したに過ぎない。評価されるようなことにはならない」と切り捨てた。
今月に入って、韓国軍は放送に使っていたスピーカーを全て撤去した。放送中止からさらに一歩踏み込んだ形で、国防部は「南北の緊張緩和に役立つ実質的な措置」とした。韓国軍合同参謀本部の9日の発表によると、北朝鮮も韓国向け宣伝放送用の拡声器の撤去を開始したという。
前出の与正氏の談話では、今月18日から実施予定の米韓合同軍事演習についても触れており、「我々の両側国境の向こうでは、侵略的性格の大規模合同軍事演習の連続的な強行により、硝煙(火薬を発火させることによって出る煙)が収まる日はないだろう」と批判した。
演習は28日までの予定で、北朝鮮による核・ミサイルや無人機攻撃などに対応する態勢の強化を図る。韓国軍からは昨年同様、約1万8000人が参加し、米軍も昨年と同規模で実施する。コンピューターシミュレーションに基づく指揮所訓練(CPX)と野外機動訓練(FTX)で構成されるが、韓国軍幹部は7日、約40件のFTXのうち、約20件を9月に実施することにしたと説明した。韓国軍合同参謀本部のイ・ソンジュン広報室長は「猛暑に伴う訓練環境の保障、バランスの取れた連合防衛体制の維持など様々な要素を総合的に検討した」と説明した。分散での実施理由に「猛暑」などを挙げたが、演習を非難する北朝鮮に配慮した可能性も指摘されている。韓国統一部(部は省に相当)のチョン・ドンヨン長官は演習について、調整を行う意向を示していた。
統一部の高官は7日、記者団に対し「緊張緩和と平和的安定は統一部と李在明政権の目標であり、韓国の目標でもある。韓米合同演習もそうした観点から、朝鮮半島の緊張緩和に貢献することを期待している」と述べた。
一部の訓練の延期に、北朝鮮が何らかの反応を示すのか注目される。
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