ソン・ミンジ(仮名)氏は、普段からFacebookやInstagramなどのSNSを頻繁に利用する、ごく普通の30代の会社員の女性である。ある日、いつものようにInstagramのDMを確認していたところ、白人男性のプロフィールからチャットリクエストが届いていた。ソン氏は好奇心からその会話を始めた。
その男性は「Hello, beautiful」と話しかけてきた。ソン氏も「これくらいなら、韓国に関心があるのかもしれない」と考え、「Hi」と返答した。
ソン氏はチャットを続ける中で男性のプロフィールを確認した。そこには「US Army」と記載されていた。
プロフィールには、男性が日常生活の中で撮影したと思われる風景や軍服姿の写真が多数掲載されていた。写真にはやや違和感もあったが、ソン氏は「外国人なのだから当然だろう」と特に気に留めなかった。チャットは継続し、男性は自身の名前を「ロバート(Robert)」と名乗り、現在イラクに派遣されている米軍兵士であると紹介した。彼は非常に孤独であると訴え、ソン氏のInstagramを見て好感を持ち連絡したと説明した。
ソン氏は「星の数ほど人がいる中で、なぜ私のアカウントに?」という疑問を感じたが、外国人と英語で会話することへの好奇心と楽しさがその思いを上回った。
ロバートは軍生活があまりに過酷で、派遣地を離れたいと訴えた。ときにはアメリカに残してきた家族に会いたいという話も漏らした。ソン氏はロバートの話に同情し、彼を励ました。次第に2人は親しくなり、お互いに「honey」と呼び合うようになった。オンライン上の関係ではあったが、10日以上にわたるやり取りを経て、2人の関係は恋人関係に発展した。
ソン氏はロバートに実際に会いたいと切望するようになった。何度も電話やビデオ通話を申し出たが、ロバートは「軍施設にいる」「任務中である」などの理由でそれを拒否した。しかしロバートが「韓国に行ってあなたと新たな人生を始めたい」と繰り返し話すようになり、ソン氏はロバートが自分を愛していると確信するようになった。
ある日、ロバートは「特別な許可を得て休暇を取ることができた」とソン氏に知らせた。喜ぶソン氏に対して、ロバートは「ひとつお願いがある」と切り出した。
「米軍の規定上、民間航空機に搭乗するには通関手数料と保安手続き費用を支払わねばならない。しかし、軍人の立場であり、かつ取引が難しい地域にいるため、外部への送金が困難である。代わりに送金してもらえないか?」
ロバートは約300万ウォン(約30万円)をソン氏に要求した。比較的大きな金額ではあったが、ソン氏は一瞬ためらった。しかしロバートの説明には説得力があり、「韓国に行けば一緒に暮らせる」という彼の言葉に心が揺れ動いた。ソン氏は「300万ウォンくらいなら問題ない。詐欺であれば、もっと大きな金額を要求してくるはず」と考え、ロバートが指定した口座にためらいなく送金した。ロバートは「やはり君しかいない」と感謝の言葉を述べ、ソン氏もそのメッセージを見て満足した。
ソン氏は自分がロバートのフィアンセ(婚約者)であると信じるようになった。ロバートとの関係を真剣に受け止め、「近々結婚する予定だ」と周囲に語るようになった。
その後、ロバートは「自分の全財産を君に送る」と言い出し、突然現金や貴重品の入ったバッグを韓国に送ると伝えた。まもなく宅配会社から「バッグが仁川に到着した。通関料と保安費用として数百万ウォンが必要だ」との連絡が入った。ロバートは「自分が韓国に行けばその金は返す。我々の未来のために受け取っておいてくれ」とソン氏に言った。ロバートが「未来のため」と強調したことで、ソン氏の気持ちは再び揺れた。ソン氏は再び送金を決断した。
ソン氏はロバートと会える日を指折り数えて待つようになった。しかしその後、ロバートとの連絡は完全に途絶えた。Instagramのアカウントも削除されていた。ソン氏は、ロバートが突発的な作戦に投入されたか、他国に移動して連絡できない状況ではないかと心配した。
似たような事例を調べるために検索していたところ、ソン氏は自分が「ロマンス詐欺」に遭った可能性があると気付き始めた。SNSを通じて接近し、信頼関係を築いた後に金銭を要求するという点が、自分のケースと完全に一致していた。
ようやく、ソン氏は自分がロバートの声すら聞いたことがないという事実、そしてSNS以外の連絡手段を一切持っていないという現実を認識した。ソン氏は失った金銭以上に、精神的なショックから抜け出せずにいた。
Copyrights(C) Edaily wowkorea.jp 88