※参考写真
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北朝鮮で先月29日、首都・ピョンヤン(平壌)でロシアと北朝鮮の芸術団による公演が行われた際、ステージ後方のスクリーンに、ロシアに派遣された北朝鮮の兵士らとみられる写真が映し出された。国旗がかけられたひつぎをキム・ジョンウン(金正恩)総書記が見つめる様子を写した写真も見られた。これら写真は、国営、朝鮮中央テレビが30日に公演を録画放送したことで公開される形となったが、北朝鮮メディアで、兵士らの様子が写真などと共に伝えられるのは初めてとみられる。異例の公開にはどのような意図があるのか。

公演は、「包括的戦略パートナーシップ条約」がロ朝の間で締結されてから1年になるのを記念して開催された。金氏はロシアのリュビモワ文化相らと観覧した。

同条約は、ロ朝のどちらか一方が戦争状態になった際、軍事的な援助を提供することなどを明記している。昨年6月、ロシアのプーチン大統領が24年ぶりに北朝鮮を訪れ、金氏と会談した際に締結された。北朝鮮の朝鮮労働党中央軍事委員会は今年4月、ロシアによるウクライナ侵攻を支援するため、金氏の命令でロシアに北朝鮮軍兵を派兵し、ウクライナとの戦闘に参加していることを認めた。同委員会の当時の声明では、北朝鮮兵が「大きな貢献をした」と主張。また、派兵は同条約の第4条に基づくものだとした。第4条には、「どちらか一方が武力侵攻を受け、戦争状態になった場合、遅滞なく保有する全ての手段で軍事的及びその他の援助を提供する」と明記されている。ロシア政府も同様に、北朝鮮軍兵士がロシアに派兵され、西部のクルスク州の奪還作戦に参加したことを認めている。ロシアが北朝鮮とこの条約を締結した背景には、ウクライナへの軍事侵攻が長期化する中、条約によって北朝鮮との軍事協力を拡大させたい思惑があったとみられている。一方、北朝鮮としては、兵力を提供する見返りに、最新の軍事技術をロシア側から得たい思惑があったとみられている。

国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁の履行状況を監視する「多国間制裁監視チーム(MSMT)」は5月、報告書を公表し、ロシアによるウクライナ侵攻をめぐり、昨年、1万1000人を超える北朝鮮兵士がロシアに派遣され、最近、3000人が追加で送られたと報告した。また、北朝鮮からロシアに少なくとも100発の弾道ミサイルが供与されたと指摘。3年以上にわたりウクライナを侵攻するロシアに対し、北朝鮮が行ってきた支援の実態が明らかになったが、北朝鮮は、報告書は偏向していると非難。ロシアとの軍事協力は「主権の正当な行使だ」と主張している。

韓国の情報機関、国家情報院は先月26日、北朝鮮からロシアへの追加派兵が早ければ今月~8月にも行われるとの予想を示した。

条約の締結から1年になるのを記念し、北朝鮮ではロシア文化省の代表団を迎え、平壌で双方の芸術団による公演が行われた。ロシアの芸術団は、伝統舞踊や朝鮮半島の民謡「アリラン」の歌唱などを披露。北朝鮮側の公演の際には、歌手による兵士をたたえる歌に合わせて、ステージ後方のスクリーンに、ロシアと北朝鮮の旗を掲げる兵士たちの姿が映し出された。また、国旗がかけられたひつぎを、涙を流しながらなでる金総書記の写真も映った。韓国紙の中央日報は「韓国と米国をはじめとする各国の遺骨奉還式を模倣するような姿だった」とした上で、「映像に表れたひつぎは4、5基であり、クルスク(州)戦線の死傷者が約4700人という点を考慮すると、極めて少ない数だ。見せるための奉還式である可能性を排除し難い場面だった」と伝えた。

韓国の通信社、聯合ニュースによると、北朝鮮が今回、こうした映像を公開した意図について、韓国統一部の当局者は「追加派兵を予定しているため、犠牲者を礼遇し、軍の士気を高める目的がある」との見方を示した。また、「(北朝鮮の住民に)非公開の派遣をめぐり、住民の動揺もあったとされることから、内部結束の目的もあると思う」と指摘。ロシアに対しては「北の犠牲を強調し、それに相応する見返りを求めるメッセージ」と分析した。
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