李大統領は就任初日の先月4日、金民錫(キム・ミンソク)国会議員を首相候補に指名したのに続き、23日には10官庁の長官(閣僚)候補を指名。1官庁の長官は留任させた。さらに、29日には追加で6官庁の長官候補者を発表し、文化体育観光部長官と国土交通部長官を除いて第1次内閣の閣僚候補が全て指名された。
李在明政権と同様に政権引き継ぎ委員会が設置されず発足した文在寅(ムン・ジェイン)政権が、閣僚候補の指名を終えるまで54日かかったことと比べてもスピード感が際立つ。尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領による昨年12月の「非常戒厳」宣言以降、長期化した政府のリーダーシップの空白を一日も早く埋め、国政を安定させなければならないという判断が背景にあるとみられる。
また、首相を含め8人の現役国会議員が入閣するのに加え、企業出身者を多数登用したり、前政権で任命された長官を留任させたりするなど、異例の人事も相次いだ。李大統領のモットーである「有能でさえあればえり好みせず、適材適所で使う」という実用主義的観点が表れているといえる。
このほか、李大統領は国民生活・経済対策も加速させた。就任当日に最初の行政命令として「非常経済点検タスクフォース(TF)」の設置を指示し、同日中に初会議を主宰した。
政府は李大統領の指示を受けて直ちに補正予算案編成の準備に入り、半月後の6月19日に30兆5000億ウォン(約3兆2300億円)規模の補正予算案を閣議決定した。非常戒厳による内需不振にトランプ米政権の関税ショックなどの対外的な不安要因が重なり、韓国経済が危機に直面しているとの判断から「緊急処方」を行った形だ。
李大統領は同月26日、就任後初めてとなる施政方針演説で「経済が再び走れるよう政府が乗り出す時がきた」とし、「経済はタイミング」と強調した。
大統領室の内外では、この1カ月が「全力疾走」する時間だったとすれば、今後はリスク管理を行い、足場を固める時間だと指摘する声もある。
最初のポイントは、近く国会で行われる閣僚候補の人事聴聞会になる見通しだ。少数野党となった保守系の「国民の力」は、国会での主導権を失わないよう各官庁の長官候補者の能力や道徳性について徹底した検証を行う構えで、李大統領としてはここで「出血」を最小限にとどめてこそ今後の改革を推進できる。
総合株価指数(KOSPI)が節目の3000を突破するなど、景気に久々に吹いた追い風を経済成長の原動力に転換できるかも鍵となる。
なかでも、革新系政権のアキレス腱(けん)とされる不動産問題が重要な課題に挙げられる。「革新系政権が発足すれば住宅価格が上昇する」という一般的な認識のなかで急騰するソウルの不動産価格を適切にコントロールできるかによって、李在明政権序盤の経済政策への信頼度が変わるとの見方が出ている。そのため、大統領室は金融当局が先月末に不動産政策第1弾として打ち出した強力な融資規制による住宅価格の推移を注視するなど、市場の反応に神経を尖らせている。
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