「景気が悪い」、「商売がうまくいかない」などの声があちこちで上がっている。単に内需の低迷のためだけでなく、韓国社会の人口構造の変化が消費を減らしている構造的な原因だとの分析も出ている。低出生率による人口減少により、お金を使う人が減り、使うお金が足りない高齢層人口は増えているためだ。
韓国銀行が1日に発表した「人口構造の変化が消費鈍化に及ぼす影響」というタイトルの報告書によると、過去10年間の民間消費の前年に比べた増加率は2%で、その前の10年間の3.6%に比べて1.6%低くなったが、このうち半分の0.8%は人口構造の変化によるものだった。
まず、人口減少と人口構成の変化により中長期の所得環境が低下し、消費が0.6%鈍化したと推定している。韓国の人口は2020年をピークに減少に転じたが、生産年齢(15歳から64歳)の人口は2019年から減り始めた。総人口が減って消費者が少なくなり、生産年齢の人口が減少して家計の所得創出力が弱くなり消費が制限されたと説明している。
次に、期待寿命の増加による貯蓄の増加と高齢層の割合の増加が平均消費性向を下げ、消費を0.2%鈍化させた。引退後には所得が減り、老後に備えて支出を控える傾向が強くなるためだ。実際に50代から60代では家計の消費が約9%減少している。この10年間、韓国の消費性向(所得のうち消費に使う割合)は全体で76.5%から70%に下がったが、下落した6.5%のうち、高齢層の消費性向の下落(1.7%)と高齢層の拡大(1.6%)が半分ほどを占めた。
今回の報告書を執筆した韓国銀行調査局構造分析チームのパク・ドンヒョン次長は「少子化と期待寿命の増加にともなう急速な高齢化、人口の減少など人口構造の変化は家計の中長期的な所得条件を悪化させ、消費性向を低めて消費を制限し続けている」と診断した。
さらに「人口の減少と高齢化が深刻化することが予想される2025年から2030年には人口構造が消費の鈍化に及ぼす影響が平均1%に達し、より一層拡大するだろう」と見通している。
研究陣らは、人口構造の変化による消費の減少には構造改革を通じて対応しなければならないと強調している。景気的要因にともなう消費の鈍化には景気対応政策が効果的だが、傾向的・構造的要因による消費の鈍化現象はこれでは解決できないということだ。
具体的な構造改革の代案としては、退職後の再雇用制度の導入を挙げた。定年退職時期を迎える第2次ベビーブーム世代(1964年から1974年生まれ)が安定的で長期間仕事ができる条件を用意することにより、家計の消費性向を高める効果が期待できるという理由からだ。
パク次長は「2次ベビーブーム世代の人的資本を積極的に活用した場合、労働力の減少による成長潜在力の低下を緩和することができるだろう」と述べ、「この世代の人々が自営業に過剰に乗り出した時よりも未来の所得に対する不確実性を低くすることができるので、老後不安による消費性向の萎縮を緩和することにも役立つ」と説明している。
一方で、韓国政府が低出生率と高齢化に対応するために政府の社会保障支出を拡大した場合、民間消費はむしろ減少する可能性があることが分かった。報告書では政府の消費が民間の消費を一部代替するだけでなく、税金と社会保険料の負担が増加し、現在はもちろん、未来の世代の消費を萎縮させる可能性があると指摘している。
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