ソウルの市民たちは3月28日の朝、出勤時に市内バスが1台も来ないという荒唐無稽な現実に直面した。バスの到着情報がポータルサイトやバスアプリなどから消え、SNSなどではシステムのエラーを疑う声が数えきれないほど書き込まれた。しかしソウルで市内バスの蒸発が起きた理由は、全国自動車労働組合連盟のソウル市内バス労働組合が12年ぶりに起こしたゼネストのためだった。
ソウル市内バス労組はインチョン(仁川)・キョンギ(京畿)など他の地域に比べて低い賃金のために人材流出が起こっているとして12.7%の賃金引き上げを要求した。労使双方は数回にわたり交渉を行い、ソウル地方労働委員会の調停会議も経たが、妥結には至らなかった。結局、3月27日から一晩中続いた交渉は決裂し、28日午前4時の始発からソウルの市内バス7382台のうち、なんと97.6%に達する7210台が運行されない事態に陥(おちい)った。
ソウルの市民たちは市内バスの運行をすべて止める方式の労組ストライキにとまどいを隠すことができなかった。この日の朝、ソウル各地で出勤ラッシュ時の交通まひが起き、タクシー待ちの長蛇の列ができた。多くの市民が自家用車を出したことで、ソウル市内のあちこちの道路で激しい交通渋滞を引き起こした。
非難の矛先は市内バスストライキを事前に防げなかったソウル市に向けられた。 ソウル市はストライキ撤回のための交渉仲裁に乗り出し、オ・セフン市長も「早急な妥結」を強調した。 結局、ソウル市が出した賃金引上げ率4.48%、名節手当65万ウォン(約7万3000円)などの仲裁案が提示され、労使間の合意がなされた。市内バスの全路線はこの日の午後3時10分に正常運行が再開された。ソウル市内バスのストライキは約11時間で解決されたが、どのようにして再発を防止するかという宿題も残った。
問題は準公営制のソウル市内バスは民営会社によって運営されており、ソウル市が労使問題に直接介入しにくいという点だ。特に労働組合法で必須公益事業に区分され、労組によるストライキ時にも継続して運行される地下鉄とは異なり、市内バスはこのような規定から外れている。
市内バスなどの定期路線旅客運輸事業も労働組合法では公益事業に分類され、国家と地方自治体などが労働争議調整を優先的に取り扱い、迅速に処理するよう取り決められている。それでもいざ労組がストライキに突入するとソウルの市内バスの運行が全て止まって交通混乱が起きる状況を、国家と地方自治体はただ見守るしかないのだ。
ソウルは約10の地下鉄路線が都市を貫通しているが、路線の間には依然として交通の死角地帯が存在する。ソウルでも主にカンブク(江北)圏に集中しているこのような地下鉄の死角地帯には、交通網を利用しにくい人たちが多く居住している。今回のソウルの市内バスのストライキで最も大きな被害を受けた市民たちは多くがこのような地下鉄の死角地帯に暮らしており、バスでの移動に依存しなければならない人々だ。
韓国の総選挙まで残りあとわずかだ。今回の総選挙で構成される新しい国会では、ストライキによって市内バスの運行がストップすることがないよう、関連法の改正に1日も早く着手するべきだ。
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