ソウル最大の水産市場・鷺梁津水産市場の様子。汚染水放出計画のニュースが出て以降、客足はめっきり減った。IAEAが包括報告書を公表した翌日も閑散としている=5日、ソウル(聯合ニュース)
ソウル最大の水産市場・鷺梁津水産市場の様子。汚染水放出計画のニュースが出て以降、客足はめっきり減った。IAEAが包括報告書を公表した翌日も閑散としている=5日、ソウル(聯合ニュース)
【ソウル聯合ニュース】東京電力福島第1原発の処理済み汚染水海洋放出計画を巡り、韓国の水産業界が国産水産物の消費の落ち込みに不安と焦りを募らせている。同計画に対し国際原子力機関(IAEA)が国際的な安全基準に合致するとした包括報告書を公表したのに続き、韓国政府も7日、計画の安全性を検証した報告書で「東京電力の汚染水処理計画が計画通り行われれば、(放射性物質の)排出基準と目標値に適合する」との判断を示した。だが、水産業界からは、汚染水の海洋放出が始まった場合に「水産物の消費萎縮はほぼ確実」と嘆く声が聞かれる。 韓国沿岸漁業人中央連合会の関係者は7日、聯合ニュースの電話取材に「漁業者もひどく心配している」としながら、「(水産物の安全性に対する)国民の不安を和らげることが一番重要に思える」と語った。漁業者の被害については「魚種、地域によって懸案と状況が異なる。政府はこうした点を踏まえて実質的な対策を講じるべきだ」と強調した。 水協(水産業協同組合)中央会は先月、韓国の水産業を守る目的で運動本部を立ち上げ、国産水産物は安全だとアピールしている。同本部のチ・ホンテ委員長は汚染水の放出開始前ながらすでに水産物の消費が減っているとしながら、「客が来ず、商売ができないなら、誰が責任を取るのか」といら立ちをにじませた。 最近の世論調査でも水産物の安全性に対する消費者の懸念がうかがえる。韓国ギャラップが先月27~29日に全国の18歳以上の1007人を対象に実施した調査では、福島原発汚染水の海洋放出に関し「韓国の海と水産物を汚染するのではないかと非常に心配している」との答えが62%、「ある程度心配している」が16%だった。 市民団体「消費者市民の集まり」が4月に実施した消費者調査でも、525人の回答者の92.4%が、汚染水の放出が始まれば水産物の消費を減らす考えだとした。「大幅に減らす」が全体の61.9%を占めた。 政府は汚染水放出への対策として、正確かつ科学的な情報に基づいて国民と意思疎通を図り、水産物の生産・流通段階で放射性物質検査を拡大するとしている。日本産水産物については福島県など8県からの輸入禁止措置を維持し、それ以外の産地に対しても米国や欧州に比べ10倍以上厳しい検査基準を適用する。 また国産水産物の消費減少に備え、民間からの買い上げと備蓄のために2900億ウォン(約320億円)の予算を確保した。沿近海漁業の生産量の2割以上にあたる最大23万トンの買い上げが可能な金額だ。 一方、漁業・水産業従事者の被害に対する支援策に関しては、具体的な議論にはまだ早いとの立場のようだ。先ごろの政府の記者会見で海洋水産部の朴成訓(パク・ソンフン)次官はさまざまな方策を考えているとしながらも「被害が具体的に可視化したとは言えない状況」と述べた。 水産業界と関係者は国産水産物の消費を促すため、水産物の安全性を懸命にアピールしている。水協中央会の運動本部がキャンペーンを展開しているほか、沿岸漁業人中央連合会は10日に南部の釜山で水産物消費促進を訴える集会を開催する。 水産関連の一部の団体は汚染水放出反対の集会を開いている。
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