無一文の大学生2人、地域の特産物を活用した「ジャガイモビール」で起業…年売上9億ウォンにスピード成長=韓国(画像提供:wowkorea)
無一文の大学生2人、地域の特産物を活用した「ジャガイモビール」で起業…年売上9億ウォンにスピード成長=韓国(画像提供:wowkorea)
ずば抜けたアイデアだけでヒットさせられるか。クラフトビールのブルワリー事業に飛び込んだアン・ホンジュン代表(27)とキム・ギュヒョン代表(28)は、「カンウォンド(江原道)の特産物であるカムジャ(=ジャガイモ)でビールを作ってみよう」というアイデア1つで「カムジャアイランド」を始めた。300回以上の失敗を繰り返した末、ポーターペールエールを開発し、現在は年売上が9億ウォン(約9400万円)、正社員8人(アルバイト12人)の会社になった。

 ジャガイモビールだけではない。ソヤンガン(昭陽江)の桃を使った「ふわっとピーチサワー」、ヨンウォル(寧越)のトマトで作った「トマトロ」もある。チュンチョン(春川)タッカルビに良く合う「タッカルビール」は春川で人気のビールとも言える。

 無一文の大学生2人は、どうやって“青年社長”として成長できたのだろうか。イーデイリーSNAPTIMEがアン・ホンジュン共同代表に会った。

 カムジャアイランドは、2人の共同代表の母校である江原大学のキャップストーンデザイン(創意的総合設計能力を持つ人材育成を目的とするプログラム)の授業の課題から始まった。ジャガイモの供給過剰で農家が苦しんでいることを聞いた2人は、地域の特産物を利用して付加価値を創出できる方法を考え始めた。

 アン代表は「当時、ジャガイモが豊作で商品性に欠けるジャガイモが捨てられていた。このジャガイモを使ってビールを作ったら付加価値を創出できると思った。廃棄費用の削減はもちろん、農家や地域社会にも役に立つと思った」と説明。

 ところが提出した課題を見た教授から肯定的な評価が続いた。アン代表は「教授は『すごくいいアイデアだ。君たちがこの事業をしないなら、後輩たちに譲って創業させてやれ』とまでおっしゃった。そういう話を聞いて事業をしなきゃと思った」と振り返った。

 2人は大学内のキャップストーンデザインコンテストでカムジャアイランドを検証し、本悪的に事業を決めようという結論を下した。結果は「大賞」受賞だった。カムジャアイランドの事業性に確信を得た瞬間だった。こうして2020年5月21日、カムジャアイランドが誕生した。

 ビール製造事業は初期投資費用がとんでもなくかかり、参入へのハードルが高い。2人には金がなかった。しかし「どこで」事業資金を支援してくれるのか知っていた。政府で支援する青年創業事業を調べるため、中小ベンチャー企業部(部は日本の省にあたる)が運営する創業ポータル「Kスタートアップ」を毎日出入りしていたという。

 「僕たちがこの事業を本当にやりたいのに、金が一銭もなく、技術もなかった。できるのは調べてすぐ動くことしかなかった。初めは、中小ベンチャー企業部の予備創業パッケージに選定された。そして農林部のベンチャー育成支援事業、江原大の産学協力団ブリッジ+事業でも助けてもらった」

 こうして2人は1億5000万ウォンの初期基本金を確保。あと必要なのは技術だった。アン代表はキョンギ(京畿)大学生涯教育院でクラフトビール講座を受講しながらビール醸造に必要な知識を得始めた。ビールの醸造に必要な設備は何なのか、どうやって設備を購入しなければならないのか、どのような企画に合わせなければならないのか、現業のディテールを積み上げていった。

 ジャガイモビールの味も大事だ。初めて作ったジャガイモビールは、ジャガイモ特有の臭いが強すぎて商品性が大きく落ちた。アン代表は「ビールについてちょっと分かっていたら、ジャガイモでビールを作るなんて思っていなかったのに、実際にビールを作ってみたらジャガイモなんて選ぶんじゃなかったと思った。研究日誌を書いていきながら、毎日ビールを作った。発酵期間が1か月ほどなのに、300回以上作りながら臭みを抑えるために努力した」と説明した。

 2人はジャガイモビールの開発過程でクラフトビールに精通したホ・ジュヨン醸造チーム長とジャガイモ研究所に勤務経歴のあるキム・テジュン研究員に出会った。こうして数百回の試みの末、ポーターペールエールを開発し、4人が共同で特許を登録した。

 カムジャアイランドのポーターペールエールは、昨年5月から販売が始まった。ジャガイモで作ったビールという変わったコンセプトに口コミが広がり、その年の売上は1億6000万ウォンに達した。そしてことしの予想売上は9億ウォンと見ている。スピード成長の秘訣は地域別の流通会社との出会いだった。

 カムジャアイランドのビールは飲食店、パブ、酒類販売店など様々な所に流通している。直接トラックでビールを配送することもあり、各地域の流通会社のネットワークを利用する時もあるという。この流通ネットワークは博覧会での縁で始まった。

 アン代表は「ビール博覧会にたくさん参加し、流通業界と交流を始めた。業界の方々に直接会って、こういう事業をしているのでよろしくとあいさつをしていった。後でSNSで新しい製品の発売を知らせると、ありがたいことに連絡をもらった」と伝えた。

 困難はなかったのだろうか。アン代表は最近、原材料の価格が急騰して困っているという。それでも初期事業を始めていく時期なので、値上げは考えていない。またアン代表は「政府の事業でもらった投資金は大部分が設備投資をできないようになっていて、設備を借りたものがあった。本格的に事業を軌道に乗せるため、収益は再び設備に再投資している」と述べた。

 それでもカムジャアイランドの階置換は確実だ。大型酒類業者とのコラボなどを聞くとアン代表は「大型の醸造場で作れるビールのスタイルが制限的なので、工程上の困難があるようだ。原料費がちょっとかかってもマニア層が望むビールを作るほうに重点を置いている。まだ大衆的なビールは僕たちが狙う市場ではない」と語った。オンライン販売も“伝統酒”の分類を受けるために無理に製品を作り出すのは能がないと判断していたという。

 現在、カムジャアイランドは地域の農協などとの協力で流通チャンネルをさらに増やそうという計画を持っている。アン代表は「まだ顧客に広く知られるようにしなければと思っている。当分はカムジャアイランドの骨組みを育てるために頑張るつもりだ」と明かした。

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