韓国で物議をかもす「公権力による不法査察論争」(画像提供:wowkorea)
韓国で物議をかもす「公権力による不法査察論争」(画像提供:wowkorea)
韓国ではメディア記者をはじめ、民間人、政治家まで広範囲にわたり通信記録(加入者情報)を照会したとして、「公権力による不法査察論争」が起こり、物議をかもしている。複数の韓国メディアが報じた。

 24日、韓国メディアのニューシスによると、高位公職者犯罪捜査処(公捜処)は24日、記者団に声明文を送り「今回の査察論争を契機に、たとえ捜査上の必要による適法な捜査手続きだとしても、憲法上の基本権を過度に侵害していないか、国民からの誤解を招く要素はないかを徹底的に点検する」と釈明した。

 今回の釈明は公捜処が今月13日、「被疑者の通話相手が誰なのかを確認するためだった」と釈明してから10日後に再度明らかにしたものだ。

 公捜処は「今年に公捜処が発足してから、すべての捜査活動を法令と裁判所の令状などに基づいて適法に進めた」とし、「関連者の調査、証拠資料の確保など捜査活動において、最大限人権侵害が発生しないよう努力してきた」と主張した。

 さらに「それにもかかわらず、過去の捜査慣行を深く省察せず踏襲し、最近、記者など一般人と政治家の通信記録を照会したとの疑惑が提起された。世間から叱責を受けることになり、非常に遺憾に思う」と述べた。

 公捜処の通信記録の照会について、メディアや野党から相次いで批判が上がっている。
 
 24日、ソウル新聞によると、23日午後まで確認された公捜処の通信照会対象者は、約100人のメディア記者をはじめ、その家族と取材員が約10人、政治家が8人だ。通信照会されたか知るためには、加入者が直接確認しなければならないため、まだ分かっていない対象者がさらに多いと思われる。一部の記者については、令状まで発行してもらい、通話対象者を照会したという。メディア記者だけでなく、家族や取材員まで通信照会したことに、各メディアでは反発が大きい。

 いっぽう、韓国保守系野党「国民の力」ユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領選候補は選挙事務所の所属議員たちも照会されたことで、「明白な野党弾圧」と批判した。24日の時点で「国民の力」の議員は26人照会されたことが分かった。

 こうした批判の声に対し、法曹界では通信記録の照会だけで「不法査察」というレッテルを貼るのは、行き過ぎた攻勢だと指摘する声が上がっている。

 ハンギョレ新聞が23日報じたところによると、法曹界からは「誰よりも捜査過程をよく知っている尹候補が、大きく反発するのは意外」という反応が出ている。捜査経験の豊富なある元検察幹部は「捜査しないのならともかく、いったん捜査を始めたら主要被疑者、被疑者と通話した相手が誰なのか確認するのは基本的な事項」とし、「過剰捜査や標的捜査の根拠なしに、資料照会だけで不法査察と主張することは、最初から捜査するなという話」と話した。ある現職の部長検事も「通話相手が誰か分からないため、通信記録を通じて確認するのが普通だ。捜査経験の豊富な尹候補が、それを不法査察と主張しているので、少し戸惑う」と話した。

 しかし、各マスコミ団体は、公捜処のこのような通信照会が、憲法が保障する通信の秘密を侵害したと糾弾している。

 23日、「メディアオヌル」によると、韓国新聞協会、韓国新聞放送編集人協会、韓国女性記者協会、韓国インターネット新聞協会のマスコミ4団体は23日、声明文を通じて「取材目的あるいは個人的理由で通話した記者に対して、公捜先の無差別的な通信照会は憲法上保障された通信秘密の自由を侵害した」とし、「またメディアの自由を脅かし、国民の知る権利を萎縮させた」と伝えた。

 続いて「公捜処が通信照会した記者たちは、公捜処に対して批判的な記事を書いた記者がほとんど」とし、「このような通信査察は過去の捜査機関が批判的な記事を書いたジャーナリストに対して、報復する時に使った不法標的査察と同じだ」と付け加えた。

 検察改革の一環として設立された公捜処は、検察の悪習を踏襲しないと何度も強調してきた。公捜処は今年1月の発足当時、「人権にやさしい捜査機構」を標榜したが、その結果が査察問題を呼ぶ無差別的な通信照会だとは失望を隠せない。「通信照会処」と嘲弄を受ける公捜処は、通信照会の背景や規模など全貌を早期に明らかにするべきだ。
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