(画像提供:wowkorea)
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韓国の大法院(最高裁判所)が、三菱重工業に対し元女子勤労挺身隊員らへの賠償を命じた訴訟。韓国のテジョン(大田)地裁は27日、原告の2人が求めていた同社の商標権と特許権の売却を命じる決定を下した。

元徴用工(募集工)訴訟をめぐり、韓国の裁判所が日本企業の資産売却を命じるのは初めて。同社は「極めて遺憾だ。即時抗告するほか、日本政府とも連絡を取りつつ、適切に対応する」としている。

同訴訟では2018年11月、大法院で三菱重工業に賠償を命じる判決が確定していた。その判決を根拠に原告は同社の商標権2件と特許権6件を差し押さえた。同社は資産差し押さえに対して不服を申し立てたが、大法院は今月10日、同社の再抗告を棄却していた。

テジョン地裁の今回の決定は、原告が商標権と特許権を売却し、1人当たり2億970万ウォンウォン(約2000万円)相当の賠償を受けられるようにするというもの。同社が即時抗告する方針を示しているので、これが実際の現金化されるまでには時間を要するとみられている。

日本政府は原告らの賠償問題に関して、1965年の日韓請求権協定で「解決済み」との立場だが、韓国政府は「植民地時代の違法行為に対する個人の請求権は認められる」と主張している。

韓国地裁の決定を受け、茂木敏充外相は28日、「韓国側は、わが国の立場について当然認識しているにも関わらず、今般報じられた動きがあったことは極めて遺憾だ」と述べた。

一方、韓国外交部(日本の外務省に相当)のチェ・ヨンサム報道官は同日、日韓請求権協定の適用範囲に関する法的解釈に違いがあるとして、日本側の主張に「一方的かつ恣意的」と反論した。

韓国メディアも今回の決定について詳細に報道。「今回の売却命令が現実化する場合、ムン・ジェイン(文在寅)政権任期末の韓日関係に相当な波紋を広げることが予想される」(中央日報)、「日本製鉄など、ほかの日本企業を相手取った裁判にも影響を与えそうだ」(朝鮮日報)とも伝えている。

そんな中、日本のNPO法人「言論NPO」と韓国のシンクタンク「東アジア研究院」は28日、日韓双方の約1000人ずつを対象に8~9月に共同で行った世論調査の結果を発表した。

調査の結果、相手国の印象について「良くない」と答えた日本人の割合は48.8%(昨年46.3%)、韓国人は63.2%(同71.6%)だった。昨年よりは改善したが、依然、両国の関係が芳しくないことをうかがわせる結果となった。この調査は2013年から毎年行われている。

また、来年5月に誕生する韓国の新政権のもとで、日韓関係が改善するかを問う質問に、日本側が46.1%、韓国側で48.3%が「変わらない」と答えた。

今回の韓国地裁による売却命令によって、資産を売却し原告への賠償に当てる「現金化」に向けたプロセスは進んだ。日本政府はかねてから「資産の現金化は日韓両国に深刻な状況を招くことになる」と訴えてきた。

韓国側が今後、現金化という一線を越える手段に踏み切れば、日韓関係は破綻することになると言っても過言ではない。1965年当時、韓国と日本の先人たちはどうにかこの難しい歴史問題を解決するために、責任のある交渉で日韓請求権協定を締結していた。今さら「違法行為に対する個人の請求権は認められる」と言う韓国には何の説得力もない。

もしそれが韓国国内の法律や判決で認められるならば、韓国政府が賠償すれば問題ない。日本は「解決済み」として韓国の裁判に対応する理由も無かったので、原告らが「徴用工」なのか「募集工」なのかを争う必要すらなかった。「徴用」ならば日本からは合法でも韓国の裁判所では違法だ。「募集」は日本からも韓国からも合法以外の解釈の余地がない。

三菱重工業が抗告するなら、日韓関係の破綻までに少しの時間が稼げる。しかし、もしも同社の抗告方針が、きょう決まる日本の新政権から反対されると、日韓関係は即刻破綻する。「感情の発散」が社会的に通用する韓国。エンタメには強いが、外交には向いていないかもしれない。
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