慰安婦被害者を象徴する少女像(資料写真)=(聯合ニュース)
慰安婦被害者を象徴する少女像(資料写真)=(聯合ニュース)
【ソウル聯合ニュース】旧日本軍の慰安婦動員に伴う損害賠償責任を問うため、主権国家である日本を韓国の法廷に被告として立たせられるかどうかを巡り、判事ごとに判断が分かれており、論争が高まっている。

 法曹界によると、日本政府に慰安婦被害者らへの賠償を命じた1月のソウル中央地裁判決を巡り、同地裁はこのほど原告側の請求を受け入れ、賠償金差し押さえのため日本政府に韓国内の財産目録を提出するよう命じた。この決定は、日本政府から訴訟費用を徴収することはできないとする同地裁の3月の決定とは食い違う。

◇判決も債権徴収も…割れる判断

 ソウル中央地裁は今年、慰安婦被害者が日本政府に損害賠償を求めた二つの訴訟で正反対の判決を出した。慰安婦被害者12人による訴訟では1月に原告勝訴の判決を出し、別の被害者や遺族20人による訴訟では4月に原告の訴えを却下した。

 1月の判決は日本が控訴せず、そのまま確定したが、日本から受け取るべき費用を徴収することを巡っても異なる判断が示された。

 判決では、被告の日本に原告1人当たり1億ウォン(約990万円)の支払いを命じるとともに、訴訟費用の被告負担を命じた。だが、地裁は3月、日本政府から訴訟費用を徴収することはできないとの決定を下した。その一方で今月、原告が受け取るべき賠償金を取り立てるため、日本に財産の開示を命じた。

 これらの判断は全てソウル中央地裁が出したものだが、担当判事はそれぞれ違っていた。

 判断が割れた主な理由は、国家は外国の裁判権に服さないとする国際法上の「主権免除」をこの事案に適用できるかどうかに対する考えが異なるためだ。

 原告勝訴の1月判決と財産開示命令は、主権免除を適用できないとの判断に基づくものだ。慰安婦動員は「人権に対する重大な侵害」であるため、主権免除を認めてはならないとの論理だ。

 一方、原告の訴えを却下した4月の判決、日本からの訴訟費用の徴収はできないとする決定は、主権免除を適用すべきと判断したものだ。国際司法裁判所(ICJ)が主権免除を認めた事例などを根拠に挙げた。

◇被害者への賠償はいつ

 こうした判断の食い違いを巡り、論争は当面続きそうだ。

 一般的に、下級審で判決が異なる場合は大法院(最高裁)の判断が基準になるが、今回は日本が無対応を貫いており、大法院の判断を仰ぐことさえ容易ではない。日本が敗訴した判決に対して上訴していないため、原告の慰安婦被害者らが敗訴してはじめて上級審の判断を受けることができる。

 上級裁判所の判断を仰ぐことができるのは、4月の判決で敗訴した原告が控訴した事件、1月の判決を巡り訴訟費用を徴収できないとする地裁決定を不服として原告が抗告した事件の二つだ。

 ただ、二審の判決が出るまでには長ければ数年かかる可能性もあり、高齢の被害者らが存命のうちに結果が出ない恐れが強まっている。

 民事訴訟の担当判事は、慰安婦の問題は国家間のことであり、外交的にアプローチする方が問題を早く解決できるはずだと指摘している。


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