「標的」に登場する植村氏(釜山国際映画祭ホームページから)=(聯合ニュース)≪転載・転用禁止≫
「標的」に登場する植村氏(釜山国際映画祭ホームページから)=(聯合ニュース)≪転載・転用禁止≫
【東京聯合ニュース】韓国で来月開催される釜山国際映画祭(BIFF)で、日本のドキュメンタリー映画「標的」(西嶋真司監督)が上映される。同作品は旧日本軍の慰安婦被害者である韓国人女性、金学順(キム・ハクスン)さん(1997年死去)の証言を最初に記事にした元朝日新聞記者の植村隆氏が、歴史修正主義者の攻撃に屈せず闘う姿を描いた。

 植村氏は朝日新聞記者だった1991年、8月11日付の大阪本社発行記事で金さんの証言を記事に書いた。しかし、この記事により「捏造(ねつぞう)記者」として誹謗(ひぼう)中傷や脅迫を受けた。

 映画「標的」は、朝日新聞社を早期退職して北星学園大の非常勤講師を務めていた植村氏が右翼の攻撃にさらされて同校を去り、高校生だった娘も脅迫されるなど、一家が追いつめられる様子を生々しく映し出した。慰安婦問題から目を背ける司法の姿にも注目した。植村氏は自身を批判したジャーナリストの櫻井よしこ氏らを名誉毀損(きそん)などで提訴したが、訴えは退けられた。

 映画は金さんの生前の証言と、慰安婦被害者を支援する施設「ナヌムの家」に暮らす被害者が苦しみの体験を語る様子を収めている。櫻井氏の著述の矛盾点を突いたほか、安倍晋三前首相が2014年10月に国会で慰安婦問題の報道を批判したことも記録した。

 この作品の中で植村氏は、自身に対する「捏造記者」批判は「植村バッシング」にとどまるものではないと考え、真実を伝えたという理由で標的にされる時代と真っ向から闘うことを決意する。

 植村氏は現在、日本の総合週刊誌「週刊金曜日」の社長兼発行人を務めている。

 監督の西嶋氏は、2014年ごろから露骨になった植村バッシングにはジャーナリズムに圧力をかけて自国に都合よく歴史を書き換える意図があるとの問題意識を持ち、映像の制作を決意した。だが当時在籍していたRKB毎日放送は理由の説明もなく企画を認めず、同氏は雇用契約延長の機会を捨てて退職し、制作に乗り出した。

 釜山国際映画祭の開幕を前に、西嶋氏はこのほど東京で聯合ニュースのインタビューに応じた。日本の放送局や新聞社などでは慰安婦問題を取り上げないという暗黙のルールがあるとしながら、この作品を通じて、おかしいことはおかしいと言える当たり前の社会の実現を訴えたいと語った。また、映画祭後も韓国で少しでも多くの人が目にできるよう、韓国での配給に向けた協力を呼び掛けた。 第26回釜山国際映画祭は南部の釜山で10月6~15日に開催される。「標的」は3回上映予定。詳細は映画祭ウェブサイト(https://www.biff.kr/kor/html/program/prog_view.asp?idx=51216&c_idx=361&sp_idx=518&QueryStep=)で確認できる。




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