金正日(キム・ジョンイル)総書記死去を受け、正恩氏は新指導者として存在感を強めているが、母親の高氏に対する北朝鮮当局の偶像化や賛美は見当たらない。
金総書記が後継者に決まった直後から、金総書記の生母の金正淑(キム・ジョンスク)氏が「白頭の女将軍」として仰がれたこととは対照的だ。
これまで指導者の偶像化で、生母の身分、経歴は権力の正当性の宣伝に不可欠な要素だった。
金日成(キム・イルソン)主席の独裁体制が固まった1960年代後半は金主席の父母や祖父母、曽祖父まで動員され、「革命家の一族」を強調した。金総書記も母親の抗日パルチザン活動などを過剰に美化し、住民に宣伝してきた。
しかし、まだ北朝鮮内部で正恩氏の母親に対する偶像化は行われていない。高氏の身分や経歴を宣伝に利用するのは難しいと判断しているようだ。
◇元在日の悲哀
高氏は日本で生まれ、1960年代に在日朝鮮人の帰還事業で北朝鮮入りした。万寿台芸術団の舞踊家だった1970年代半ばから金総書記と同棲し、2004年にがんで死亡するまで金総書記と暮らした。
北朝鮮当局からみると、高氏は1980年代初めまで北朝鮮住民に「日本のスパイ」「資本主義に染まった不純分子」のレッテルが張られていた在日朝鮮人の娘で、舞踊家にすぎない。「尊敬する指導者」の母親の身分とは程遠い。
1980年代後半から北朝鮮を襲った外貨獲得ブームで、北朝鮮に戻った在日朝鮮人は富の象徴とされたが、政治権力にはなれなかった。
北朝鮮軍部が1999年ごろ、金総書記の許可を取らず、高氏の長子の正哲(ジョンチョル)氏か正恩氏を後継者にするため、高氏の偶像化を進めた際も、経歴については一切言及しなかったという。
正恩氏の後継体制が安定する場合、高氏に対する偶像化は形が変わるにしても進める可能性が高いとみられる。
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