指揮者のチョン・ミョンフンさんは、ソウル市交響楽団音楽監督のほか、アジアフィルハーモニー管弦楽団(APO)の常任指揮者兼音楽監督という肩書きも持つ。APOは音楽を通じたアジアの和合、才能あるアジア演奏家の発掘を目指し、チョンさんが1997年に創設したオーケストラだ。
後援を受けられず2000年以降は活動が少なかったが、2006年に仁川市という心強いスポンサーが現れて以来、毎年夏に世界トップクラスのオーケストラで活動するアジア団員を集め、アジア各国で演奏会を行っている。
5日には中国・北京の国家大劇院でAPOの中国デビュー演奏会を開いた。演奏会に先立ち記者らと会ったチョンさんは、何事でも現在より大きなことを夢見てこそ発展があるとした上で、APOは音楽というすばらしい媒介を通じ、葛藤(かっとう)と反目のアジア史を克服し、和合することを目的に各国の団員が自発的に集まったものだと強調した。「口先だけでアジア、アジアと言わず、実際にその中でもまれるチャンスを作らねばならないが、ここで音楽が中心になっていきます」。
また、アジア諸国は自国オーケストラへの支援には積極的だが、アジア全体を網羅するオーケストラへの支援はまだ考えていないと指摘。幸い3年前に仁川市が後援に乗り出し、APOが活動を再開できたと説明した。
チョンさんは2000年にヨーロピアン・フィルハーモニックをローマで始めようとしたが、当時も十分な支援を確保できずに創設は白紙化した。クラシックの伝統のある欧州でも地域全体を包括するオーケストラがないのに、APOが活動を続けていることは意義深いと評価する。
APOは欧米のオーケストラ、日中のオーケストラ、ソウル市交響楽の団員など構成員が多様で、均衡がとれていることが強みだという。「実力者が集まり楽しく練習するため、練習期間が短くても息がぴったりだ」とチョンさんは言う。
チョンさんは10年前に比べ、東洋の演奏者のレベルが高くなっただけではなく、演奏者自体も大きく増えたことに目を細める。東洋の演奏者が西欧有数のオーケストラで活動するケースが多くなり、東洋人だけで世界的なオーケストラを作れるほどだという。特に、ここ10年間で中国から実力ある演奏者が多く輩出されたことに満足感を示し、遅れた感はあるが、APOが中国のステージに初めて立つことになりうれしいと語った。
演奏会で披露するマーラーの交響曲第1番「巨人」に対しては、マーラーは雄壮でありながらも感性的なため東洋人の情緒と合っているが、アジアのオーケストラがそれほどきちんと演奏する作品でないため選曲したと説明した。
自信を持って感情を表現しなければならないため、実力と余裕があってこそ演奏できる作品だが、東洋の演奏者らはミスを恐れて慎重になる傾向があり、難しく感じているようだと指摘した。「後ろの演奏者が本来の音を出せず、前の演奏者に合わせていく雰囲気がどんなオーケストラにも存在します。しかし、ミスをしても構わないから絶対にそんなムードを出さないよう団員に言います。もうわれわれも十分に自信を持っていいのですから」。
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