李氏は2日の閣議で、「政教分離の原則が本当に重要だが、この政教分離の原則が破られている。例えば宗教団体が組織的、体系的に政治介入した事例がある」と指摘した。具体的な宗教団体名には触れなかったが、旧統一教会と尹前政権の癒着疑惑を念頭に置いた発言とみられる。さらに李氏は、「日本では宗教団体に解散命令を出した事例がある」と述べ、日本の事例を引き合いに出し、宗教団体の解散命令について「一度検討して何が必要か報告してほしい」と指示した。
韓国では今月1日、旧統一教会のトップ、ハン・ハクチャ(韓鶴子)総裁の初公判がソウル中央地裁で開かれた。韓被告は尹前政権から便宜を受ける目的で、尹氏の妻、キム・ゴンヒ(金建希)被告などに金品を贈ったとして、政治資金法違反などの罪に問われている。初公判で韓被告側は「(教団の)元幹部の政治的野心から始まった独断的な行為だ」と主張し、起訴内容を全て否認した。一方、検察側は冒頭陳述で、「韓被告は旧統一教会の最高権力者だ。同被告の承認なくして違法な資金やロビー活動が1ウォンたりとも動くことはない」と述べた。また、「韓被告らは政教で癒着し、信徒たちの金で権力を買収した。信徒たちはローンを組んでまで統一教会に献金した」と指摘した。韓被告は82歳。この日は車いすに乗り、白いマスク姿で出廷した。これまで「この国の政治に関心はない」などとして政界との癒着を一貫して否定している。
韓被告は日本の植民地時代の1943年に、現在の北朝鮮で生まれた。17歳の時に、当時40歳だった教団の創設者、ムン・ソンミョン(文鮮明)氏と結婚、7男7女をもうけた。旧統一教会内では「真(まこと)のお母様」と呼ばれ、組織を主導してきた。2012年に文氏が死去した後、教団トップに君臨し、強い影響力を持ってきた。
公判は今後、週1~2回程度行われる予定で、旧統一教会と尹前政権との癒着の実態が明らかになるか注目されている。一方、教団内では韓氏の後継固めの動きが進んでいるとみられる。今年4月、韓氏の孫のムン・シンチュル氏とムン・シンフン氏が「真の愛の相続」を意味するという「天愛祝承子」に任命された。韓氏は9月の逮捕前、「危機に直面した際は『天愛祝承子』とその家族を中心に団結するように」と指示していたという。教団は韓氏の逮捕後、代表者会議を開き、「『天愛祝承子』とその家族を中心として対処していく」との立場を表明した。1日の韓氏の初公判の際、法廷前には、傍聴を希望する大勢の教団関係者らが列をつくった中、その先頭に、「天愛祝承子」に任命されたムン・シンチュル氏の姿があった。
日本では、旧統一教会をめぐり、信者の高額献金が社会問題化するなどした。宗教法人法では、宗教法人が法令に違反し、公共の福祉を著しく害すると認めた場合に解散を命令できると定めている。文部科学省は2023年10月、東京地裁に旧統一教会の解散命令を請求した。地裁は今年3月、教団に解散を命じる決定を出したが、教団側はこれを不服として即時抗告した。東京高裁で審理が続いていたが、先月21日に終結した。高裁は、早ければ年度内にも判断を示す可能性がある。高裁が地裁決定を支持した場合、教団は宗教法人格を失い、清算手続きが始まる。一方、教団は最高裁に不服申し立てができ、最高裁が命令を取り消した場合、手続きは停止する。
一方、韓国には前述したような日本と同様の宗教法人法はない。2日の閣議で旧統一教会を念頭に、宗教団体の解散を含めた法制度のあり方を検討するよう指示した李大統領は「(政教癒着を)放置すれば、憲政秩序が破壊されるだけでなく、宗教戦争のような状況が起こり得る」との認識を示した。
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