◇石油元売りに「打撃」
国内の石油元売り業界は年間10億バレル以上の原油の全量をドルで買い入れており、為替相場の影響を大きく受けている。
SKイノベーションは先ごろ公表した四半期報告書で、9月末時点から10%ウォン安が進んだ場合、税引前利益が約1544億ウォン減少する影響があると分析した。
ただ元売り各社は生産した石油製品の半分以上を輸出して為替レートによる差益を得ており、中長期的にも派生商品への投資などを通じたリスク回避に乗り出している。
業界関係者は聯合ニュースの取材に対し、来年の経営計画は1ドル=1400ウォン程度と仮定して策定しているが、毎月、前月の平均為替レートによって調整していると説明した。
◇燃料費高騰の航空業界 旅行需要の低迷も悪材料
航空業界もウォン安の影響を大きく受ける業種の一つだ。
航空会社の営業費用の中で最も大きい約30%を占める燃油費をはじめ、航空機リース料、整備費、海外滞在費など固定費用は通常、ドルで支払われる。ウォン安が進めば海外旅行控えも生まれ、航空需要に否定的な影響を及ぼす。
大韓航空の場合、今年7~9月期の純外貨負債は約48億ドルで、1ドルが10ウォン上がれば支払額が約480億ウォン増える「為替差損」が発生する。
韓国航空各社はウォン安が続いていることで、現在策定中の来年の事業計画のうち、ウォン安への対応をさらに強化することを検討する方針だ。
一方、海運業界にとってウォン安ドル高は一部プラスの側面がある。海上運賃はドルで設定されているため、ドル高によりウォン換算で差益を得ることができる。ただ、燃料価格の高騰により、利益は半減する可能性がある。
◇関税にウォン安で「泣き面に蜂」の鉄鋼業界
鉄鉱石や製鉄用原料炭などを輸入する鉄鋼業界はウォン安に加え、米国が鉄鋼関税を強化したことで二重の苦しみを受けている。また世界経済の減速で鉄鋼需要が低迷し、負担はさらに増している。
ただ、鉄鋼大手は鉄鋼製品を輸出して稼いだ外貨で主要原料を買い入れるなどして為替レート変動の影響を最小化しようと対応している。
業界最大手ポスコの関係者は、為替リスクの監視を強化し、為替レートの変動が経営活動に及ぼすマイナス影響を最小化していると説明した。
◇免税店で「価格逆転」現象 大型スーパーは輸入商品多角化で対応
ウォン安・ドル高により、ドル建てで商品を販売する韓国免税店では一部商品の価格が百貨店より高くなる逆転現象が発生している。
これに加え、ショッピングを中心とする団体観光が中心だった韓国旅行のパターンが体験型の個人観光に変化し、外国人観光客がグルメや文化体験に対する支出を増やしたことで免税店の客単価はさらに減少した。
各免税店は観光客の負担を軽減するため割引やクーポン支給、為替補償などの特典を強化し、観光トレンドに合わせて体験イベントを強化しているが、為替の影響を相殺するのは難しい状況だ。
ロッテ免税店と新世界免税店は昨年、現代免税店と新羅免税店は今年、それぞれ希望退職の募集に踏み切った。また、新羅免税店と新世界免税店は赤字が拡大していることから、仁川国際空港の免税事業権の一部を返納した。
輸入食品を販売する大型スーパーも対策に奔走している。
イーマートは仕入先と年間契約を結び、アーモンドや冷凍果物、オリーブオイルなどを比較的安定した価格で調達している。輸入肉はウォン安・ドル高により冷蔵肉の相場が上昇したため、冷凍肉を5~6カ月分確保し、備蓄している。
ロッテマートは米国産牛肉の価格上昇を受け、7月の事前契約でオーストラリア産牛肉の仕入れ量を前年比約20%増やした。
◇化粧品は輸出増で利益も ファッション業界にも複合的影響
化粧品業界では、原材料の輸入でドル高とユーロ高による損失が予想される。
化粧品会社の関係者は「ドルで取引されるグリセリンや脂肪酸、界面活性剤のほか、欧州から輸入する乳化剤は為替の変動に伴う影響を受ける恐れがあり、状況を注視している」と説明した。
ウォン安は原材料輸入では打撃になるが、韓国コスメの人気で増加した輸出においてはプラスの影響もある。
別の化粧品会社の関係者は、海外での売り上げ増加が原材料価格の上昇に伴う影響を相殺しているとし、長期的な影響を見守る必要があるとの見方を示した。
業界ではウォン安・ドル高基調が続いていることを受け、長期的な事業面の危機管理を進めている。化粧品大手、アモーレパシフィックの関係者は「調達先の多角化やグローバル事業の拡張などにより、為替変動のリスク管理を続けている」と明らかにした。
ファッション業界も、輸入と輸出が同時に行われることで複合的な影響を受けている。
生地を輸入する場合、ウォン安・ドル高によるコスト増は避けられない。
アパレル大手、LFの関係者は「カシミヤやウールなど一部高級生地と副資材は供給元を分散し、買い入れ時期も分けたため短期的な影響は限定的」とした上で「ウォン安が長期化する場合は費用構造に影響が生じる恐れがあり、これに備えたリスク管理を続けている」と説明した。
輸出を中心とするODM(相手先ブランドによる企画・生産)企業ではウォン安がプラスに作用する一方、原材料や物流費などが上昇するため効果は限定的とみられる。
海外ブランドのODMを手掛けるハンセ実業の関係者は「輸出時に両替されたウォンの収益が増加するプラス効果があるが、原材料や物流費などドル建ての費用も上昇する」とし、「来年度の事業計画策定時に為替リスクを反映し、対応策を模索している」と述べた。
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