マレーシアで1日に開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)拡大国防相会議で握手を交わす韓国の安圭伯国防部長官(左)と米国のヘグセス国防長官=(聯合ニュース)
マレーシアで1日に開かれた東南アジア諸国連合(ASEAN)拡大国防相会議で握手を交わす韓国の安圭伯国防部長官(左)と米国のヘグセス国防長官=(聯合ニュース)
【ソウル聯合ニュース】韓国の安圭伯(アン・ギュベク)国防部長官と米国のヘグセス国防長官は4日、ソウルで韓米の定例安保協議(SCM)を開催し、韓米同盟の懸案について幅広く議論する。

 両氏は米軍主導の韓米連合軍が持つ有事作戦統制権の韓国への移管や国防費の増額、在韓米軍の戦略的柔軟性などの従来からの懸案に加え、先月29日に開かれた韓米首脳会談で李在明(イ・ジェミョン)大統領が言及した原子力潜水艦の建造についても協議する見通しだ。

 SCMは韓国と米国の主な軍事政策を協議・調整する国防分野の最高協議会で、韓米の国防トップが実務級による統合国防対話(KIDD)などで議論された軍事政策について最終報告を受け、協議する場だ。

◇原潜が韓米最大の安保懸案に浮上 SCMで議論へ

 国防部が先月27日に今年のSCMの日程を公開した際に発表した公式議題は▼対北朝鮮政策の連携▼連合防衛体制▼拡大抑止▼地域安全保障協力▼サイバー・宇宙・ミサイル協力▼防衛産業協力▼国防科学技術協力――などだ。

 原潜の建造は議題に含まれていないが、韓米首脳会談で安全保障の最大の懸案として急浮上したことから、今回のSCMでも何らかの形で取り上げられると予想される。

 李大統領は先日の韓米首脳会談でトランプ米大統領に原潜への燃料供給を認めるよう要請し、トランプ氏は翌日、原潜の建造を承認したと表明した。原潜の運用には動力となる小型原子炉の燃料である濃縮ウランの確保が必須であり、これに対し米国側の同意が必要となる。

 韓国は文在寅(ムン・ジェイン)政権時代にも原潜導入を認めるよう米国側に打診し、当時政権1期目だったトランプ氏は前向きな反応を示したが、米政府内で反対意見が多く、実現しなかったとされる。そのため、今回のSCMでは米国防総省に対し韓国の原潜確保の必要性について説得する必要がある。

 一方、トランプ氏が原潜の建造場所として韓国のハンファグループが買収した米フィラデルフィアのフィリー造船所を挙げたことについても韓米間で協議が必要になりそうだ。

 同造船所には潜水艦を建造できる施設がないが、韓国国内の造船所には3600トン級の潜水艦を建造した実績がある。韓国の造船所で5000トン級以上の原潜を建造するにも追加の設備投資が必要だが、フィリー造船所で建造するには全ての施設を新たに作らなければならず、それだけ時間と費用がかかる。

 また、米国で原潜を建造した場合、韓国で製造した部品をどのように搬入し、原子炉はどこで作ったものを使用するか、MRO(メンテナンス、修理、オーバーホール)はどこで行うかなど考慮すべき要素が多くなる。

 このため韓国政府は当初、原潜を国内で生産し、燃料の濃縮ウランは米国側から供給を受ける計画だった。

 造船業界の関係者は「原潜を国内で建造したとしても少なくとも10年かかるが、米国で建造すればさらに(時間が)かかる」とした上で、米国側の技術支援を受けることができれば米国での建造を考慮できると説明した。

◇有事作戦統制権の移管日程議論へ FOCの検証完了時期決定か

 今回のSCMでは、有事作戦統制権の韓国への移管日程についても議論されるとみられる。

 ヘグセス長官は先ごろ、李在明政権が有事作戦統制権の韓国移管を推進していることについて「立派なこと」と支持を表明。安長官はこれを歓迎した。

 有事作戦統制権の移管は、▼初期作戦運用能力(IOC)▼完全運用能力(FOC)▼完全任務遂行能力(FMC)の3段階の検証後に行われる。現在、FOCの評価を終えて検証が進められているが、今回のSCMでFOCの検証を終える時期を決める可能性が提起されている。

 また、韓国の国防費増額と在韓米軍の戦略的柔軟性についての論議も行われる見通しだ。

 韓国側は遅くとも2035年までに国防費を国内総生産(GDP)の3.5%まで増額する方策を提示し、米国側もこれを受け入れたとされる。今年の国防費は61兆2000億ウォン(約6兆6000億円)で、GDPに占める割合は2.3%だ。来年以降の名目GDP成長率を3.4%と仮定し、国防費を毎年7.7%ずつ引き上げれば、35年には国防費が128兆4000億ウォンに増え、GDPに対する割合も3.5%に拡大する計算になる。

 在韓米軍の戦略的柔軟性に関しては、06年に韓米が合意した内容を再確認する形で整理される見通しだ。この問題は盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代にブッシュ政権の要求によって浮上し、韓米は06年に立場を明らかにした。当時発表された韓米共同声明には「韓国は同盟国として米国の世界軍事戦略の変化の論理を十分に理解し、在韓米軍の戦略的柔軟性の必要性を尊重する」という内容が盛り込まれた。

 また「戦略的柔軟性の履行において、米国は韓国が韓国国民の意志と無関係に北東アジアの地域紛争に介入することはないという韓国の立場を尊重する」とも記された。韓国の立場としては、在韓米軍を必要に応じて再配置し、域内や域外の非常時に投入する機動軍として活用することを望む米国側の要求に一定部分応えると同時に、望まぬ紛争に巻き込まれる状況を避けるための独自の安全弁を用意したといえる。


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