長期化した韓米関税交渉や高まる米中対立など、これまでになく不確実性が増す状況の中で「首脳外交スーパーウイーク」を迎えた李大統領は、二国間・多国間外交のいずれも成功を保証しにくい情勢下で、少なからぬ成果を収めたとの評価が出ている。
ただ、揺らぐ世界貿易秩序をはじめ、対外環境をめぐる不確実性が深まっているだけに、今回の成果に安住せず、韓国の国益を最大限守るための「実用外交の深化」の段階に進むべき時点だ。
韓米首脳会談が開かれた先月29日は、李大統領の外交手腕が試される日だった。
関税交渉の長期化の中で、場合によってはなんの成果もない「手ぶら外交」に終わりかねないとの懸念も出ていた。
しかし、両国は会談直前に「年間最大200億ドル(約3兆800億円)の分割投資」で劇的に合意し、長期の課題を解決して韓国経済の不確実性を払拭(ふっしょく)することに成功した。
関税交渉の妥結により安全保障分野の合意も近く文書化されるとみられ、就任後、5カ月でようやく韓米同盟を本来の軌道に戻したといえる。
さらに、李大統領は韓米首脳会談で自ら「原子力潜水艦」を議題として取り上げ、トランプ米大統領から原潜開発の承認を得ることで安全保障分野の宿願の一つを果たした。
終始「商業的合理性」という原則を堅持し、相手のニーズを見抜いた議題選定など、李大統領の外交手腕もこうした成果に大きく寄与したとの評価も出ている。
中国の習近平国家主席、日本の高市早苗首相とそれぞれ初めて行った首脳会談も友好的に終えた。
1日の韓中首脳会談では、両国が互恵的かつ安定的に関係を発展させていくことの認識で一致した。
韓国にとって中国が経済的にも安全保障的にも重要なパートナーであるという事実を強調し、「米国の対中けん制に同調している」という疑念を和らげるという目標をひとまず達成した形だ。
李大統領は先月30日に韓日首脳会談では、保守強硬派とされる高市首相と交流・協力を続け「シャトル外交」も継続することで合意した。
韓米同盟と韓米日協力を基本軸としつつ、中国との関係も安定的に管理するという「国益中心の実用外交」の基本構図を、APEC首脳会議を機に固めたとの評価が出ている。
李大統領はAPEC首脳会議では「慶州宣言」をまとめ上げ、韓国の外交的リーダーシップを証明した。
APEC初となる人工知能(AI)に関する共同宣言「AIイニシアティブ」と「人口構造変化対応フレームワーク」の採択を導いたことも、新たな議題を提示する外交能力を示したといえる。
また、米半導体大手エヌビディアから計26万枚、最大14兆ウォン(約1兆5120億円)規模の画像処理半導体(GPU)を確保し、アマゾンウェブサービス(AWS)などグローバル企業から計90億ドルの投資を誘致するなど「経済外交」も加速させた。
ただ、こうした成果に満足してはならないとの指摘も同時に出ている。
米国との関税・安全保障交渉は終了したが、まだ了解覚書(MOU)やファクトシートの文言を整える作業が進行中であり、国益が損なわれる可能性を最小化するため、最後まで細部を点検すべきである。
交渉結果に基づく手続きが進む過程でも、双方の利害が衝突する状況がいつでも起こり得るため、気を緩めることはできない。
特に今回の交渉自体が、米国の保護貿易主義・自国中心主義への回帰という変化した経済・安全保障環境の結果であることを忘れてはならない。
激変する国際秩序に能動的に対応しつつ、韓国の安全保障をより強固に守る方向で韓米同盟を現代化することが今後の課題となる見通しだ。
韓中・韓日関係も同様といえる。
トランプ大統領が原子力潜水艦導入を承認した直後、中国が「核不拡散義務」に言及したように、中国は今後も韓米の関係緊密化を疑念の目で見ると予測される。
一時的に休戦した米中対立が再び激化した場合、韓国に対して「どちらの側につくのか」と迫る圧力が露骨化する可能性も否定できない。
また、高市首相が国内の支持基盤を意識した強硬な行動を再開すれば、長年の火種である歴史問題が再び協力の障害として浮上する可能性もある。
今回の首脳外交を機に築いた実用外交の基本の枠組みの中で、突発的な変数を綿密に管理し、綱渡りのように重心を取りながらバランスを維持する努力を続けなければならないとの指摘が出ている。
今回不発に終わった米朝対話の実現に向けて「ペースメーカー論」の有効性を証明することも李大統領の重要な課題だ。
国内では、急激に対立する与野党の構図の中で政争によって外交活動に支障が生じないよう、超党派的支持を引き出すことも課題として挙げられる。
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