事故は2022年10月29日、ハロウィーンを前にした週末で人がごった返す梨泰院の通りで起き、日本人2人を含む159人が死亡した。犠牲者は10代、20代の若者が多かった。
この事故では警備体制の甘さや警察や消防の対応の不備が指摘された。新型コロナウイルスの流行に伴う行動制限がない中で迎えるハロウィーンということで、多くの人出が予想されていたが、警備に動員された警察官らの人数は少数だった。また、事故発生の数時間前から「人が多すぎて圧死しそうだ」などといった通報が警察や消防などに多数寄せられていたが、適切な対応が取られなかったことが事故を招いたとの批判が噴出した。
事故を受けて、韓国の警察庁は約500人で構成する特別捜査本部を発足させ、捜査を進めた。一昨年1月、捜査結果を発表し、管轄の自治体や警察、消防など、法令上、安全予防や対応の義務がある機関が事前の安全対策を怠るなど、事故の予防対策を取らなかったために起きた「人災」と結論付けた。
地元警察署長や区長、ソウル警察庁長官らが裁判にかけられ、警察署長には実刑判決が下った。一方、業務上過失致死傷などの罪に問われた事故発生場所のヨンサン(龍山)区長は無罪となった。判決当時、遺族は反発。「159人も死亡したのに無罪があり得るのか。この国の司法府はどこにあるのか」と怒りをあらわにした。
一方、遺族たちはさらなる原因の究明を求めており、韓国の国務調整室と行政安全部(部は省に相当)、警察庁で構成する「梨泰院雑踏事故合同監査タスクフォース(TF)」は今月23日、記者会見し、事故当時、当時の警備隊員の人数が不十分だったことについて、尹前政権が大統領府を移転させたことが影響を及ぼしたとの調査結果を発表した。
2022年5月に大統領に就任した尹氏は、大統領選の公約で、それまで権威の象徴だった青瓦台(大統領府)を「国民にお返しする」と宣言。公約通り尹氏の就任と共に青瓦台は一般に開放された。同時に、大統領が執務に当たる大統領室は、雑踏事故のあったソウル・龍山区内の国防部庁舎に移転した。
移転後、大統領室周辺では集会やデモが頻繁に行われるようになり、事故当日も、集会現場の警備に、多数の警察官が投入されていたという。23日に記者会見したTFは、「大統領室の龍山移転が周辺の集会管理のための警備需要増加をもたらし、その結果、事故当日、梨泰院近辺には警備人員が全く配置されない事態を招いた」とした。当時の警察上層部は、ハロウィーンで梨泰院一帯が混雑することが予想される中、対策を講じなかったという。また、管轄の龍山警察署は、2020年と21年には「ハロウィーン群衆管理警備計画」を策定していたが、事故のあった22年は策定していなかったことも分かった。
ことし6月に就任したイ・ジェミョン(李在明)大統領は就任直後に事故現場を訪れ、国民の安全を守るための対策づくりを進めると強調した。
事故から間もなく3年となるのを前に、25日には外国人犠牲者の遺族が現場を訪れたほか、ソウル市庁前の広場では、市民追悼大会が開かれた。遺族やキム・ミンソク首相らが出席し、犠牲者に黙とうをささげた。会場では犠牲になった159人の名前と似顔絵がスクリーンに映し出され、遺族の代表やキム首相らがあいさつした。29日には大規模な追悼式典が予定されている。また、犠牲者を悼み、同日午前10時29分から1分間、ソウル全域で追悼のサイレンが鳴る。
Copyrights(C)wowkorea.jp 2

