韓国では、昨年12月に「非常戒厳」を宣言したユン・ソギョル(尹錫悦)前大統領の罷免に伴い、6月3日、大統領選が行われ、革新系「共に民主党」の前代表の李氏が当選を果たし、第21代大統領に就任した。
李氏は、就任以来、閣僚選びを迅速に行うなど、「即断即決」で政権運営を進めてきた。対外的には就任から間もなくしてカナダ西部カナナスキスで開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)に招待され出席。早々と外交デビューを果たした。石破茂首相とはこの席で初対面し、先月下旬には、訪日して首脳会談を行った。李氏はかつて「対日強硬派」として知られたが、大統領選候補者となった頃から対日批判を封印。首脳会談では、未来志向の日韓関係発展に向けた協力を推進していくことで一致した。
11日に行われた就任100日に合わせた会見で、李氏は日本との関係についても言及し、「歴史や領土の問題では難しいが、それ以外の分野で協力できることが多い」と述べ、関係を強化していく考えを示した。一方、石破首相が今月7日、辞任を表明。韓国で、石破氏は日韓関係に比較的穏健とみられており、韓国は次期政権が今よりも保守的な性格が強くなる可能性もあるとして、来月4日に行われる自民党総裁選の行方を注視している。李氏はこの日の会見で、石破氏の辞任により、日韓関係が難しくなる可能性があるとの考えも示した。
李政権の国政ビジョンをまとめる大統領直属の国政企画委員会は先月、今後5年間の国政運営構想を発表した。構想は、国家ビジョンと3大国政原則、5大国政目標、123大国政課題、財政支援計画などで構成され、国家ビジョンには「国民が主人の国、ともに幸せな大韓民国」を提示。最優先の国政課題として「国民主権の憲法精神を実現するため、新たな憲政体制の構築に向けて憲法改正を推進する」と表明した。構想にはそのほか、人工知能(AI)技術を活用した成長戦略や税制改革を通じた地方財政の強化などを主な課題として盛り込んでいる。李氏は先月、国政運営構想の報告会で「(この構想を基に)国民が主人である国、本物の大韓民国をつくっていく」と述べた。
李氏の支持率は8月に一時下落したものの、その後、回復。世論調査会社の韓国ギャラップが今月2日~4日まで全国の18歳以上の1002人を対象に行った調査によると、李氏を支持すると答えた人は63%に上り、前週よりも4ポイント上昇した。就任100日前後に行われた調査では、歴代大統領の中で3番目に高かった。
尹前大統領の罷免に伴い行われた大統領選で当選した李氏は、11日の就任100日に合わせた会見でこの100日を振り返り、「回復と正常化のための時間だった」と述べた。
大統領選の過程では、保革や世代などで様々な形で社会の「分断」が進んだ。これを受け、国民統合を目指す李氏は、今月8日、大統領室庁舎に革新系与党「共に民主党」のチョン・チョンレ代表と保守系最大野党「国民の力」のチャン・ドンヒョク代表を招き、昼食会を兼ねた会合を開いた。李氏は「与野党が過剰に対立し、国民が懸念する状況になることは望ましくない」とした上で、「与野党が互いに容認できる部分を見つけ出し、共通の公約は果敢に共同で実行することも良い方法だ」と提案した。会合では、3人が笑顔で握手をする場面も見られたが、翌9日の国会本会議で、「共に民主党」のチョン代表は「国民の力」に対し、尹前大統領による「非常戒厳」宣言と関連し、内乱勢力との断絶と真の謝罪を要求。「謝罪なしには協力はない」との立場を改めて示した。一方、「国民の力」はチョン氏が同党を「内乱党」と表現し、党の解散審判に言及したことに強く反発した。与野党は依然、激しく対立しており、李氏が目指す、真の国民主権政府の実現には、程遠い状況となっている。
通信社の聯合ニュースは「嵐のような100日を送った李大統領だが、本当の試練はこれからとの見方も出ている」と伝えた。その上で「まず、任期序盤の改革の速度が速かっただけに、これに伴う副作用を最小化することが重要な課題に挙げられる」と指摘した。
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