尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領の罷免に伴い実施された大統領選で当選した李大統領の任期は、投開票翌日の6月4日に始まった。
与党関係者は10日、聯合ニュースの取材に対し「李大統領としては政権引き継ぎ委員会もない劣悪な状況で、初めての国家非常状況を収拾しなければならない状況に置かれた」とし、「自然と序盤の国政運営は『国家システム正常化』に合わせざるを得なかった」と話した。
「回復と成長」を核心基調に掲げた李大統領は国民生活と経済を立て直すことが最も急を要する課題と判断し、まず非常経済点検タスクフォース(TF)を設置した。
非常戒厳に伴う混乱の影響で低迷する内需を正常化し、未来の成長エンジン創出の基盤を築くためには、政府が積極的に役割を担うべきだというのが李大統領の考えだ。
特に7月には全国民を対象に「民生回復消費クーポン」を給付し、積極的な財政投資という新政権の政策基調を象徴的に示した。
強力な改革も並行した。前政権で起きた疑惑について、政府から独立して捜査する特別検察官3人を任命し、非常戒厳宣言を巡る内乱事件などに対する捜査を強化した。また、与党との協議を経て、検察庁を廃止して「公訴庁」と「重大犯罪捜査庁」を新設し、企画財政部を「企画予算処」と「財政経済部」に分離する内容の政府組織改編案を打ち出すなど、構造的改革も加速させている。
人事においても明確なメッセージを出した。64年ぶりに文民の国防部長官を任命し、初めて労組の全国組織である全国民主労働組合総連盟(民主労総)出身の金榮訓(キム・ヨンフン)氏を雇用労働部長官に抜てきするなど、慣例に縛られない「実用主義」の人事を実施した。
外交では米国との関税交渉と初の韓米首脳会談において、「善戦」したとの評価を得た。
韓国は25%の相互関税が発動される8月1日を目前に、3500億ドル(約51兆円)の対米投資を約束し、相互関税を25%から15%に引き下げることで米側と合意した。
相互関税を25%から15%に引き下げ、関心が大きかった農畜産物分野の追加開放を除外したことから「最悪は免れた」と評価された。
8月25日にワシントンで開かれた韓米首脳会談も無難に消化し、大きな山を越えた。
米国に先立って日本を訪れて韓日首脳会談を行い、韓日間の「シャトル外交」を再開し、関係改善の扉を開いた点も注目される。
嵐のような100日を送った李大統領だが、本当の試練はこれからとの見方も出ている。
まず、任期序盤の改革の速度が速かっただけに、これに伴う副作用を最小化することが重要な課題に挙げられる。
李大統領が検察改革と関連して「重要争点について国民の前で合理的に討論せよ」と注文したのも、細やかな改革の必要性を重視した発言と受け止められる。
ただ、この過程で大統領室と与党の見解の相違がたびたび露呈しており、今後、李大統領の負担になる可能性がある。
また特別検察官の捜査や与党主導の法改正に対して野党が反発を強めていることも懸念材料となる。
8日に開催された李大統領と与野党の代表との会合では、国民生活について話し合う協議体の設置で合意するなど与野党が協力に向け一歩を踏み出したが、成果につながるまでには困難が予想される。
外交安保分野の課題も容易ではない。初の韓米首脳会談を終えて大きな山を超えたものの、関税関連の細部交渉や韓米同盟の現代化を理由に行われる安保交渉などは依然として残っている。
北朝鮮、中国、ロシアが結束を強める中、朝鮮半島の非核化や平和体制の構築をどのように進展させるのかも悩みの種だ。
李大統領は今回の韓米首脳会談で「ペースメーカー」を自任し、トランプ米大統領に北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党総書記)との会談を提案するなど、米朝対話の実現に向け努力しているが、北朝鮮はこれに呼応しておらず、状況を楽観するのは難しい。
韓国政界は、南東部・慶州で10月末に始まるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議など、李大統領が下半期に外交の舞台でどのような成果を収めるかによって、朝鮮半島情勢も変化するとみて、神経をとがらせている。
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