8日に発表された政府組織改編案は、共に民主党・政府・大統領室が前日、検察庁廃止案(政府組織法改正案)を確定したことによる。今後は、捜査は行政安全省傘下に新設される重捜庁と国家捜査本部および警察が担当する。一方、法務省傘下には公訴庁を残し、起訴や公訴維持、令状請求のみを専担させる。
警察は詐欺などの一般市民に関わる犯罪や、告訴・告発された事件など、すべての事件を捜査する。一方で、新たに設立される重捜庁は、内乱、腐敗、経済、選挙など、特に重大な9種類の犯罪の捜査を担う。地域の重捜庁は、これまでの地方検察庁や支庁と同様の構造になる見込みだ。
警察と重捜庁が捜査を終えた事件は、公訴庁に送致される。公訴庁の検事は、起訴の可否判断と公訴維持のみを担当し、家宅捜索や拘束などの強制捜査の申請があった場合、令状請求業務も担う。
今後、具体的な検察改革案を議論する国務総理室傘下の「汎政府検察改革推進団」では、検事の補完捜査権維持に関する議論が集中的に行われるとみられる。検察としては、「最後の砦」とされる補完捜査権を死守するため、必死の構えを見せている。検察内部では、直接捜査機能は放棄しても、捜査の遅延防止や公訴維持、捜査機関間の牽制の観点から、補完捜査権だけは検察に残すべきだとの意見が支配的だ。
すでに捜査権調整以降、捜査の遅延問題が深刻化している。もし検察が直接捜査をする「補完捜査権」を失い、警察に捜査を依頼する「補完捜査要求権」しか持てなくなれば、事件のやり取りが何度も繰り返される「ピンポン現象」が増え、事件処理が立ち行かなくなるのではないか、という懸念も出ている。現行の捜査手続きでは、検事の捜査指揮がなくなり、事件を送致された検事が警察に補完捜査を要求するため、刑事事件の処理期間は2020年の平均142日から昨年には312日へと2倍以上に増加した。
検察側は、補完捜査権が要求権になれば、さらに「ピンポン」が深刻化し、まったくなくなれば、警察捜査の誤りを正す最低限のけん制装置すら消滅すると危惧している。公訴庁は警察と重捜庁が送致した記録だけで起訴の可否を判断しなければならず、公訴維持に必要な追加捜査も要請できなくなるためだ。
一例として、警察が被疑者の犯行自白で証拠・資料収集が不要だと見て検察に送致し起訴した後、裁判で被疑者が犯行を否認する場合、過去には検察が直ちに追可捜査を行い収集された証拠を裁判に提出できたが、補完捜査権がなければこれさえも不可能になる。
韓国の法曹関係者は、「拘束事件は、警察に事件を差し戻して補完捜査を要求すれば、拘束期限の問題で釈放せざるを得ない」とし、「捜査内容に少しでも不備があれば、拘束を解かなければならない」と指摘する。
また、検察が異議申し立てや抗告事件も捜査できなくなり、司法的統制に空白が生じ、事件の真相究明が困難になるとの観測も出ている。与党は重捜庁発足後、一定期間検事を派遣すると表明したが、法務省所属だった検事や検察捜査官は、所属省庁の変更という不確実性から、重捜庁への異動に反発せざるを得ない。
国家捜査委員会の新設をめぐっても異論が出ている。与党は、国務総理直属の独立的な機関として国捜委を設置し、複数の捜査機関を総括させる方針だ。国捜委は、捜査機関間の権限調整、不起訴・不送致事件の審議、再捜査命令など、牽制と統制機能を遂行するようになっている。しかし野党は、委員の過半数が政府や大統領の意向で選ばれ、捜査の独立性が損なわれる可能性や、権限の集中による「屋上屋を架す」機関に転落する可能性を問題視している。
さらに、検察庁廃止が憲法に違反するという指摘もある。憲法89条16項に「検察総長」の名称が明記されており、検察庁をなくすには憲法改正が不可避だというものだ。高麗大学法学専門大学院のチャ・ジナ(車珍兒)教授は、先の国会公聴会で、「検察総長は憲法に書かれている憲法上の機関」とし、「憲法の下位法律でこの名称を変えるのは違憲だ」と述べている。
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