<W解説>韓国・最大野党の新代表にチャン・ドンヒョク氏=二分した党内は再び一枚岩となれるか?
<W解説>韓国・最大野党の新代表にチャン・ドンヒョク氏=二分した党内は再び一枚岩となれるか?
韓国の保守系最大野党「国民の力」はこのほど、新しい党代表にチャン・ドンヒョク氏(56)を選出した。チャン氏は昨年12月に「非常戒厳」を宣言したユン・ソギョル(尹錫悦)前大統領への弾劾に一貫して反対した。韓国紙の東亜日報は「『弾劾反対』陣営を代表するチャン議員が選出されたことで内部紛争はさらに続きそうだ、との見方が出ている」と伝えた。チャン氏は「変化し、一つになった『国民の力』をお見せする」と党改革を訴えているが、尹氏の弾劾・罷免による同党のイメージダウンは大きく、党勢回復は容易でないのが実情だ。

同党は先月25日、党員投票(80%)と国民世論調査(20%)を反映した代表選の決選投票で、チャン氏を新代表に選出した。チャン氏は、ことし6月の大統領選に出馬したキム・ムンス前雇用労働相との直接対決に勝利した。両候補の差は2367票だった。チャン氏は世論調査でキム氏に後れを取っていたが、党員投票で勝利した。韓国紙の朝鮮日報は「旧主流派議員たちが『世代交代論』を掲げて支援し、強硬派党員たちの指示を得た結果だと受け止められている」と伝えた。

昨年12月、当時のユン・ソギョル(尹錫悦)大統領が「非常戒厳」を宣言。「非常戒厳」は、韓国憲法が定める戒厳令の一種。戦時や事変などの非常事態で、軍事上、必要となる場合や公共の秩序を維持するために大統領が発令するものだ。戒厳令の発出は1987年の民主化以降初めてのことだった。

宣言を受け、武装した戒厳軍の兵士がガラスを割って国会議事堂に突入。軍事政権時代を連想させる事態に、国会前には多くの市民が集まり、戒厳に反対するシュプレヒコールを上げたほか、軍の車両を取り囲むなど騒然とした。

だが、戒厳令は国会議員の過半数が解除を求めた場合、大統領はこれに応じなければならず、発令直後、国会で本会議が開かれ、出席議員の全員が解除に賛成。尹氏はわずか6時間で非常戒厳を解いた。当時、野党だった「共に民主党」などは、尹氏が「憲法秩序の中断を図り、永続的な権力の奪取を企てる内乱未遂を犯した」などとして憲法違反を指摘し、尹氏の弾劾訴追案を国会に提出した。国会での採決の結果、同案は可決し、これを受け、尹氏は職務停止となった。その後、尹氏はことし4月、罷免された。

これに伴い、韓国ではことし6月に大統領選挙が行われた。「非常戒厳」を宣言した尹政権への評価が最大の争点となり、開票の結果、当時、最大野党だった「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)氏が当選。「国民の力」は野党に転落した。李氏は選挙運動期間中、尹氏を擁護した「国民の力」を「内乱勢力」と位置づけ、「憲法秩序を崩壊しようとした内乱勢力を審判する選挙だ。国民に銃口を向ける軍事クーデターが繰り返されない国をつくる」と訴えた。

大統領選後、「国民の力」内からは、尹前政権で政権運営に失敗した勢力の退陣や世代交代など、全面的な刷新を求める声が相次いだ。

「国民の力」は先月26日、新代表を決めるための党大会を開いた。党代表選には4人が出馬し、1回目の投票で過半数を得た候補がおらず、決選投票が行われた。決戦投票でチャン氏がキム前雇用労働相を僅差で破り、新代表になった。チャン氏は中部・チュンチョンナムド(忠清南道)ポリョン(保寧)市出身。ソウル大学を卒業後、教育部(省)に入省した後、長く、判事を務めた。2022年の国会議員補選で初当選し、現在、2期目。チャン氏は尹氏に近いとされ、尹氏の弾劾には反対の立場を取ってきた。そのため、代表選の過程では、弾劾賛成派との対立が目立った。「弾劾賛成派」は尹氏との決別が党刷新につながると主張してきたが、チャン代表は彼らは「内部の敵」と位置付けた。

新代表にチャン氏が選出されたことに、公共放送KBSは「党内で『弾劾賛成派』と『弾劾反対派』の対立が避けられない見通しだ」と伝えた。

チャン氏は「全ての右派市民と連帯して李在明政権を引きずり下ろす」と語り、政権打倒に意欲を示した。先月27日に国会で開かれた最高委員会議では「これまでお見せできなかった新しい『国民の力』の姿をお見せする。見守ってほしい。『国民の力』は党員全員が一つになって前に進まなければならない」と訴えたが、東亜日報は「チャン氏が『内部から攻撃する勢力と共にすることはできない』と公言してきただけに、紛糾は一層深まりそうだ」と伝えた。

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