職場内でのいじめ被害を通報した際、その実態を調査する労働監督官が消極的に対応したり、逆に通報者を責め立てる事例があることが明らかになった。被害者が最後に頼らざるを得ない存在であるだけに、労働監督官に対する人権感受性教育などの対策が不可欠だとの指摘が出ている。

市民団体「職場パワハラ119」は31日、過去1年間に職場内でいじめを経験した会社員345人のうち、雇用労働部など関係機関に通報した人は49人であったと明らかにした。そのうち59.2%が労働監督官の調査や措置、対応は「消極的だった」と回答したという。労働監督官は、労働関係法令違反に対して捜査権限を持つ特別司法警察官である。

同団体によると、労働監督官の対応が「消極的」と答えた29人は、「通報者を無視したり、会社側に肩入れするような発言があった」と感じており、その理由として「通報の取り下げや和解の強要、不誠実な調査」などを挙げた。

今月、同団体に通報した会社員A氏は「親に対する暴言まで受け、堪えられず通報したのに、労働監督官から『それを職場いじめと認めるなら、いじめのない会社などあると思うか』と言われた」と明かした。

また、賃金未払いに関する申告においても、労働監督官が通報の取り下げや和解を促すケースが報告されている。6月に団体へ情報提供した会社員B氏は「賃金未払いで申告したところ、監督官から『未払い分が振り込まれれば結局通報を取り下げることになるのだから、事前に取り下げ書を書け』と言われた。調査初日から取り下げ書の作成を迫られ、あまりに理不尽で公権力を信じられなくなった」と吐露した。

さらに、調査の不誠実さを懸念する声も多い。同団体によれば、労働監督官執務規程では申告を受理した日から25日以内に処理することとされ、処理期間内に一度だけ延長が可能と定められている。しかし実際には数か月にわたり処理が遅延する事例も少なくないという。

「職場パワハラ119」は、「監督官の不適切な発言や専門性の欠如、取り下げの強要、不誠実な調査、遅延処理、使用者による自社調査といった問題は、個々の監督官の態度だけに起因するものではなく、人員不足、教育体制の欠如、法的・手続的規定のいい加減さ、さらには会社側による行政訴訟乱発など、複合的要因の結果である」と指摘した。

同団体はさらに「問題解決には、労働監督官の人権感受性および専門性向上のための教育強化、人員の増員、公正かつ具体的な規定や調査マニュアルの整備、そして会社側に免罪符を与える誤った指針の改正など、多面的な対応が必要だ」と主張した。

「職場パワハラ119」のキム・ユギョン労務士は「労働部は問題が指摘されるたびに人権教育や専門性強化策を講じると述べてきたが、それだけでは解決は難しいのなら、現在進められている別途立法を含め、根本的な対策の早急な整備が必要だ」と強調した。
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