<W解説>2つの「異例」の下で行われた日韓首脳会談
<W解説>2つの「異例」の下で行われた日韓首脳会談
韓国のイ・ジェミョン(李在明)大統領が23日、就任後初めて来日した。石破茂首相と日韓首脳会談を行い、未来志向の日韓関係発展に向けた協力を推進していくことで一致した。

会談は約2時間行われた。初めに同席者を限定した少人数の会議を行い、その後、拡大会合を実施した。冒頭、石破氏は「非常に厳しい戦略環境の下、最初に日本を訪問していただき、大変心強い」と述べた。これに対し、李氏は「それほど韓日関係を重要視しているとご理解いただければ」と応じた。

会談で両首脳は1965年の日韓国交正常化からこれまで築かれてきた基盤に基づき、両国関係を安定的に大きく発展させていくことで一致した。また、北朝鮮の核・ミサイル開発の抑止に連携して取り組む方針を確認したほか、経済や文化交流、少子高齢化への対策など幅広い分野で関係強化を図っていくことを申し合わせた。人的交流のさらなる拡大に向け、ワーキングホリデーの制度を拡充することも合意した。

両首脳は会談後、17年ぶりに首脳会談の成果を文書で発表した。文書では、国際社会の様々な課題に対し、両国が共に協力していくこと確認したとしている。65年の国交正常化以降これまで築かれてきた基盤に基づき、両国関係を未来志向で安定的に発展させていくことで一致したと明記した。

今回の李氏の来日は、首脳の相互往来「シャトル外交」の第1弾と位置付けられた。日韓シャトル外交とは、日本の首相と韓国の大統領が相互に訪問し、両国間の課題を話し合おうというもの。当初はリゾート地のようなところで気軽に行うことを目的とし、2004年7月、韓国の済州島で当時の小泉純一郎首相とノ・ムヒョン(盧武鉉)大統領との間で実施された。両首脳はその後、2004年12月に鹿児島県指宿市、2005年6月にソウル市で会談を重ねたが、小泉氏が靖国神社を参拝したことが韓国で反発が強まり、関係悪化を受けて一旦中断した。その後、2008年にイ・ミョンバク(李明博)大統領と福田康夫首相の間で復活するも、2011年12月に京都で行われた李明博氏と野田佳彦首相との間で行われた会談で、慰安婦問題をめぐる応酬となり、以後断絶した。パク・クネ(朴槿恵)大統領は訪日せず、ムン・ジェイン(文在寅)大統領は安倍晋三首相と「シャトル外交」を再開することで合意したが、本格的な実現には至らなかった。しかし、2022年5月、日韓関係改善に意欲を見せるユン・ソギョル(尹錫悦)前大統領の就任で潮目が変わった。2023年5月、当時の岸田文雄首相との間で12年ぶりに「シャトル外交」が復活した。李氏は今年6月に大統領に就任。当時、できる限り早く日本を訪れたい考えを示していた。

李氏は24日、日本を出発して米韓首脳会談を行うために米国に向かったが、韓国の大統領が同盟国の米国よりも先に日本を訪れたのは異例のことだった。また、韓国大統領が8月に来日したことを「異例」と伝えている日本メディアもある。韓国は同月15日が日本の植民地支配からの解放を祝う「光復節」で、その前後は反日感情が高まる傾向にある。読売新聞が韓国大統領記録館のデータとして伝えたところによると、1987年の民主化宣言以降に就任した過去8人の大統領のうち、8月に来日した例はないという。同紙は「李氏は今年の光復節演説で、過去の歴史を直視するよう日本に求めつつ、『未来志向』の日韓関係を追及すると述べており、現実主義的な発想から8月訪日に踏み切ったようだ」と解説した。

李氏は日本に対して、長く強硬的な言動を続けてきたことで知られる。日本との友好路線を築いた尹前政権で、最大野党の代表だった李氏は「屈辱外交」と尹氏の対日政策を批判してきた。しかし、6月に行われた大統領選に出馬した李氏は、当初から最有力候補と目され、自身が韓国のリーダーとなることが現実味を帯びるや、「対日強硬的」な発言を封印。大統領選が迫った5月にSNSに投稿した動画では、日韓関係に言及し、「私は本当に日本と仲良くしたい」と述べ、文化交流や経済などの分野で日本と協力を進めたい考えを示していた。大統領となった李氏は「実用外交」を掲げている。日本に対するかつての強硬的な姿勢から転換した背景には、外交上、日本と対立することは得策ではないとの考えがあるとみられている。しかし、日本政府内では、これまでの日韓関係の経緯を踏まえ、李氏が今後、国内世論などを背景に強硬路線に転じる可能性に警戒感もある。歴史問題に関して李氏は、過去の政権での合意や解決策について踏襲する考えを示している。しかし、慰安婦支援団体などからは、こうした考えに批判の声が出ている。

今回の会談で、歴史問題について石破氏は「(植民地支配への反省とおわびを盛り込んだ)1998年の日韓共同宣言を含め、歴代内閣の立場を全体として引き継ぐ」と伝えた。これに対し李氏は「難しい問題は難しい問題として扱い、一方で協力できる分野では協力する」と述べた。
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