<W解説>かつて芸能人並みの人気だった韓国・尹前大統領の妻、16もの疑惑で特別検察官が捜査
<W解説>かつて芸能人並みの人気だった韓国・尹前大統領の妻、16もの疑惑で特別検察官が捜査
韓国のユン・ソギョル(尹錫悦)前大統領の妻、キム・ゴンヒ(金建希)氏をめぐる複数の疑惑を捜査する特別検察官は7日、金氏の逮捕状を請求した。金氏には世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の元幹部から不正に高級バッグを受け取った疑いなど、計16件の疑惑がもたれている。特別検察官は前日に金氏を出頭させ、取り調べていた。金氏は容疑をおおむね否認したことが確認されている。金氏の出頭を伝えた7日付の韓国紙ハンギョレは同日の社説で、「これまで多くの疑惑がもたれ、多くの犯罪容疑がかけられていたにも関わらず、まともな調査さえされず、治外法権として君臨してきた聖域が崩れ去る、象徴的な場面だった」と指摘。「特権は迅速かつ厳しい調査によって、法の下の平等を立証すべきだ」と主張した。

金氏といえば、夫の尹氏が前回2022年の大統領選に出馬を表明したころから注目を集めてきた。夫が選挙活動に奔走する中、金氏に経歴詐称疑惑が浮上。金氏が2006年にスウォン(水原)女子大学の教授採用に応募した際、提出した志願書に虚偽の経歴と虚偽の受賞記録を記載していたと報じられ、その後、次々と経歴詐称が明るみとなった。

競争社会の韓国では、有力者やその家族の経歴に対し世論は厳しく、また当時、大統領選候補の夫が「公正」を掲げて選挙戦を戦っていたこともあり、金氏はまだこの時は「大統領候補」の夫人でありながら、思わぬ形で注目を浴び、厳しい批判にさらされた。

その後開いた記者会見で金氏は、「良く見せようと膨らませ、間違って書いたものもある」と事実を一部認めた上で、「あまりに恥ずかしいことだった」などと謝罪。会見では尹氏との出会いなどについても赤裸々に語り、かえってその純粋無垢な姿が有権者から好感を得た。

夫が2022年5月に大統領に就任すると、ファーストレディーとしての金氏の一挙手一投足にも関心が集まった。ネット上にできたファンクラブは、アイドル並みの会員数を誇った。

しかし、金氏をめぐって様々な疑惑が浮上し、尹氏は在任中、野党から厳しい追及を受けた。また、金の疑惑が尹氏の支持率低下の一因にもなった。昨年11月、尹氏は会見で「私の周囲のことで国民に心配をおかけした。心からおわび申し上げる」と謝罪した。

金氏には、自動車会社の株価操作に関与した疑惑や、知人から高額なブランドバッグを受け取った疑惑が指摘された。当時、野党だった「共に民主党」は、金氏をめぐる疑惑を追及するため、政府から独立した特別検察官に捜査させる法案(キム・ゴンヒ特検法)の成立を目指した。だが、尹氏は拒否権を行使した。

その後、尹氏は昨年12月、「非常戒厳」を宣言。非常戒厳は韓国憲法が定める戒厳令の一種で、戦時や事変などの非常事態で、軍事上、必要となる場合や公共の秩序を維持するために大統領が発令するものだ。戒厳令の発出は1987年の民主化以降初めてのことだった。尹氏はわずか6時間で非常戒厳を解いたが、政治的、社会的混乱は大きく、尹氏はその後、弾劾訴追され、今年4月、罷免された。尹氏が「非常戒厳」を宣言した背景には、妻の金氏が抱える数々の疑惑があったとの見方もある。妻が窮地に追いやられている状況が、尹氏に戒厳を決断させる最後の一押しになったと指摘されている。

政府から独立して捜査を行う特別検察官は、金氏をめぐる複数の疑惑について捜査を進め、今月6日、金氏を事務所に呼んで事情を聴いた。金氏をめぐる疑惑は、前述のように、知人が運営するドイツ車輸入販売会社の株価操作への関与や、知人を通じ旧統一教会の関係者から不正に高級ブランドのバッグやダイヤのネックレスなどを受け取ったことなど16にも上る。

金氏は6日の出頭の際、報道陣に対し、「国民の皆様に、私のような何でもない者がご心配をおかけし、申し訳ない」と述べた。通信社の聯合ニュースによると、この日の取り調べは午前10時半ごろ始まり、午後6時に終わった。容疑はおおむね否認したという。

翌7日、特別検察官は金氏の逮捕状を請求した。証拠隠滅の恐れがあり、さらなる出頭ではなく、身柄の確保を優先した。

韓国紙のハンギョレは7日の社説で、「これまで金氏は、世論の批判が強い時には頭を下げたかと思えば、自分がいつそんなことをしたのかというように一切無視するという態度を繰り返してきた」と指摘。「尹錫悦、金建希夫妻によって破壊された国を再建する唯一の道は、徹底した調査と適切な処罰だ」と主張した。
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