今後米国は各国・地域からの輸入品に10~41%の関税をかけることになり、この数十年にわたり米国主導で構築されてきた自由貿易体制に大きな変化がもたらされることが予想される。
貿易立国の韓国にも15%の相互関税がかけられ、米国市場における競争力や企業の収益性に否定的な影響が避けられなくなった。また、主要企業が関税を避けるため米国に生産拠点を移すなど現地投資に乗り出すことで、米国を除いた国では製造業が停滞し、雇用が減りかねないとの懸念も出ている。
相互関税は関税を「万能薬」と考えるトランプ大統領の大統領選での公約だった。トランプ氏は他国が関税や非関税障壁で米国製品の輸入を妨げているため慢性的かつ大規模な貿易赤字が生じ、米国の安全保障と経済の大きな脅威になっているとし、相互関税を課すことの正当性を主張している。実際には米国の巨大な市場を諦めることができない国・地域に対し、関税で圧力を加え、どうにかして貿易赤字を減らすのが目的だとみられている。
米国と自由貿易協定(FTA)を締結し、米国からの輸入品の99%以上について無関税としている韓国に対して、トランプ氏は当初、25%の関税をかけると通知した。トランプ氏が交渉を通じて税率を下げることができると表明したことで、韓国など主な貿易相手国はトランプ政権を説得するための交渉に着手した。
トランプ政権は英国を皮切りに、ベトナム、フィリピン、インドネシア、日本、欧州連合(EU)などと関税交渉で合意した。しかし、米国の現地メディアも「事実上、米国の『強奪』と変わらない交渉だった」と評する内容で、交渉相手の国・地域は大規模な対米投資や米国製品の購入など、金銭的な見返りを約束することで税率の引き下げを求めざるを得なかった。
韓国も3500億ドル(約52兆円)規模の対米投資と1000億ドル相当の米国産エネルギーの購入などを条件に税率を25%から15%に下げることで米国と合意。品目ごとの関税では自動車関税を25%から15%に下げることで合意した。
韓国が米国市場で争っている日本やEUについても相互関税率は15%が適用された。ただ、日本については、日米間で説明に食い違いが生じており、15%が既存の税率に上乗せさせる可能性が指摘されている。
トランプ氏が約4カ月前に相互関税の発動を予告したことで、不確実性が高まり各地で混乱が生じたが、発動後も先行きはなお不透明だ。米国は韓国をはじめとする主な貿易相手国と合意したものの、大きな枠組みの原則的な合意に過ぎず、今後、追加交渉による細部調整が必要で、すでに立場の違いが露呈している。
韓国政府は対米投資3500億ドルのほとんどは融資と融資保証だと説明するが、トランプ氏は韓国、日本、EUの対米投資は米国への「贈り物」と主張する。さらにトランプ政権は安保上重要な品目に追加関税を課すことを予告しており、早ければ来週にも半導体や医薬品に対する税率を発表する見通しだ。
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