韓国では3年前に尹政権が富裕層などの減税を実施。今回はこれが撤廃され、事実上の増税となる。政権のカラーを反映したものだが、一貫性のない税制は納税者の立場では信頼性が劣るという指摘も出ている。
また、米国の関税政策などで不確実性が高まる中、法人税率が上がれば企業活動が萎縮するとの懸念も出ている。
◇法人税と証券取引税の減税は撤廃 大株主の基準も再強化
関係当局によると、企画財政部が「税制改正」ではなく「税制改編」を推進するのは2022年以来。「改正」が細部の見直しであるのに対し、「改編」は税制の基調と方向性を全体的に変える作業という。
今回の税制改編案には、尹政権が進めた減税政策を撤廃する内容が主に盛り込まれた。
引き下げられた法人税率は来年から区分に応じて10~25%に引き上げられる。前政権では株式の売買など金融投資によって発生した所得に対して課される「金融投資所得税」が廃止され、株式の売却時に発生する「証券取引税」は引き下げられたが、引き下げ前の水準に戻される。
株式譲渡所得税が課される大株主の基準も再び強化される。
政府は、前政権の減税政策の影響で歳入基盤が崩れたため、全面的に復旧しなければならないと説明している。
国民や企業が所得の中から税金や社会保険料をどれだけ払っているかを示す国民負担率が韓国は先進国に比べて低いことに加え、人工知能(AI)など未来産業への投資や少子高齢化への対応のために財政補強が急がれることが増税の根拠となった。
今回の税制改編により、5年で約8兆1672億ウォン(約8777億円)の税収増になると政府は推計した。
このうち4兆1676億ウォンは法人税の引き上げに伴う大企業の負担になると予想される。中小企業の税負担も1兆5936億ウォン増える。一方、中流よりも下の層の負担は1024億ウォン減るという。
米トランプ政権の関税強化策により国内企業の負担が高まる中、法人税率の引き上げは企業にとってさらなる悪材料になるとの懸念が出ている。
これと関連し、企画財政部の李炯日(イ・ヒョンイル)第1次官は「前政権は減税で景気の活力を高め税収も増える好循環を狙ったが、最近の経済状況と税収をみれば政策効果を確認するのは難しい」として「今は歳入基盤の正常化が必要だ」と話した。
今回の税制改編は、本格的な増税を予告するシグナルとも受け止められる。
特に総合不動産税については、公示価格にかける比率を調整することでいつでも増税に踏み切ることができる。
◇政権交代のたびに「税制正常化」 不透明の指摘も
今回の税制改編の「歳入基盤拡充」は前政権の減税政策を元に戻すことが強調された。
政府と与党「共に民主党」は29日に法人税率の引き上げを発表し、富裕層に対する減税の「正常化」と強調した。
一方、総合不動産税を大幅に緩和した尹政権も当時、「課税正常化」と自賛した。
このような急転換は税政策の予測可能性を低める。
大企業のある役員は「いつか政権が変わればまた法人税など税率が行ったり来たりするのではないか」として「適応は市場の役割」と話した。
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