総額3500億ドルの対米投資の提案では、「米国の造船業を再び偉大に」と題した造船産業協力構想が重要な役割を果たしたことが分かった。韓国の造船産業の能力が米国との関税交渉で突破口になったと評価される。
韓米両国の発表をまとめると、韓国は日本やEUと類似した方法で米国に大規模な投資を行い、米国から製品やエネルギーを輸入することを提案。8月1日から課される予定だった相互関税と4月から課されている自動車への追加関税を引き下げることに成功した。
相互関税は25%から15%に、自動車への関税も25%から15%にそれぞれ引き下げられ、日本やEUと同じ条件になった。
日本の対米投資は政府系金融機関が5500億ドル規模の出資・融資・融資保証枠を設けるもので、韓国の3500億ドルの対米投資もこれと類似した形がとられる。
バイデン米前政権が半導体、2次電池、次世代エネルギーなど国内の戦略産業を育成するために補助金を支給し、供給網の強化と経済成長を目指したのに対し、トランプ政権は巨額の対米黒字を抱える韓国や日本に産業育成の費用を負担させるアプローチを用意し、今回の交渉で相当な成果を上げた。
韓国側は日本と同様に、自国の経済が耐えられる範囲内で米側の要求を大局的なレベルで受け入れたものとみられる。
3500億ドルは韓国の昨年の国内総生産(GDP)の20%に相当する。ただ政府は、計画の細部をみれば、韓国経済が耐えられるレベルであり、韓国が提供する投資にともなう恩恵は相当部分、韓国企業が享受することになると予想されるとし、日本の「投資パッケージ」とは異なると主張する。
韓国政府が提示した投資パッケージの規模は3500億ドルで日本の約6割程度だ。このうち実際に直接的な財源が投入される出資額は限定されており、残りの融資と融資保証についても保証が大部分を占めるという。
日本も政府の公式説明によると、5500億ドルの投資パッケージのうち、出資額は1~2%に過ぎないようだ。韓国政府が提案した3500億ドルの投資パッケージの中心が韓国の強みである造船に合わせられた点も日本と異なる部分だ。
3500億ドルのうち1500億ドルは船舶建造、維持・補修・整備など造船業全般を包括するもので、2000億ドルは半導体や原発、2次電池、バイオなど米国が育成しようとする分野に対する投資という。韓国政府はこれらの分野が、韓国が世界でリードする分野であることから、投資による実質的な恩恵は韓国企業に還元されると期待している。
特に造船の場合、米国で造船所を買収して運営したり、米国の主な造船会社と共同事業を展開したりする企業が事実上、韓国企業だけであることから造船分野の投資により利益を受けるのは米国に進出する韓国造船会社になると見る向きが強い。
天然ガスを中心に今後長期にわたり、1000億ドル分の米国産エネルギーを購入するという約束も、有権者にアピールする直観的な数字を好むトランプ大統領を説得する上で重要な要因として作用したと評価される。
ただ韓国政府によると、エネルギー輸入大国である韓国としては、輸入先の調整程度で十分耐えられるレベルという。エネルギー調達を全面的に輸入に頼る韓国は昨年、原油や石油製品の輸入だけで1100億ドル以上を支払った。
大統領室の金容範(キム・ヨンボム)政策室長は「1000億ドルはわれわれが(購入)できるレベルであり、今回の合意のために追加で需要を創出するわけではない」として「中東産を米国産に変えるような構成変化はあるが、わが国の経済規模では必要なエネルギー輸入額なので購買には無理はない」と説明した。
米国が切実に求める造船産業の復興などのカードを前面に出し、競合国と近いレベルの条件を確保しつつ、「レッドライン」(譲れない一線)である牛肉やコメなどの市場開放については現状を維持したことで、合意した他の国・地域と比べて善戦したと評価される。
トランプ氏は日本との合意では、米国産農産物の輸出拡大を誇ったが、韓国との合意では「韓国が米国産農産物を受け入れることにした」と述べるにとどめた。月齢30カ月未満の牛肉のみの輸入を認める規制の緩和問題やコメの輸入拡大について、韓国政府は約束はまったくしていないと説明した。
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