写真は平壌市内にある柳京ホテル
写真は平壌市内にある柳京ホテル
北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)総書記の肝いりで整備され、今月開業した東部・ウォンサン(元山)のリゾート「カルマ(葛麻)海岸観光地区」について、北朝鮮はこのほど、外国人観光客の受け入れを中断した。理由は明らかにされていない。リゾートの整備の目的の一つには外貨獲得もあるとみられることから、今後、北朝鮮は親密な関係にあるロシアをはじめとする国から観光客を受け入れて、外国人観光を本格化させるとの見方が広がっていた。実際、今月7日からは北朝鮮住民のみならず、外国人観光客の受け入れを開始。第一陣としてロシアから団体ツアー客が到着した。しかし、北朝鮮当局が運営する観光情報サイト「朝鮮観光」は16日、同地区について突如「外国人観光客は暫定的に受け入れていない」と告知した。受け入れを突然、中断したのはなぜなのか。

葛麻海岸観光地区の造成工事は2016年に始まったが、資金難やコロナ禍で一時中断。ようやく完成にこぎつけ、金総書記は「今年最も大きな成果の一つ」と満足を示した。同地区内にはスポーツ・レジャー施設のほか、約2万人が宿泊できるとされる施設がある。北朝鮮の国営、朝鮮中央通信は開業の際、観光産業の新たな幕開けになると伝えた。先月24日に行われた完工式にはロシアのアレクサンドル・マツェゴラ駐北朝鮮大使も招待された。北朝鮮はロシアのウクライナ侵攻をめぐり、ロシアに兵士を派遣している。韓国政府関係者は、完成にこぎつけた同地区の整備には、兵士派遣の見返りとしてロシアから建設の支援を受けたのではないかと指摘している。

金氏はかねてから観光産業の発展に強い関心を示してきており、同地区の整備は金氏の肝いりのプロジェクトとされる。実際、金氏は同地区の整備中、工事現場を何度も視察に訪れた。

同地区にはホテルのほか、スポーツ施設や商業施設などが整備された。北朝鮮メディアは「国宝級の海岸観光都市の誕生だ」とした。

先月24日に開かれた完工式には金総書記やリ・ソルジュ(李雪主)夫人、娘のジュエ氏らが出席した。金氏は、観光地区が完成したことについて「文化観光発展に関する(朝鮮労働)党と政府の方針を実現する道のりにおける誇り高い第一歩だ」と喜びを口にし、観光産業について「地域振興を推進し、国家の経済成長に貢献する動力になる」とした。

金氏は完工式でテープカットをした後、地区内に整備された大型の屋外プールエリアを娘のジュエ氏や李夫人と共に視察。朝鮮中央テレビが公開した映像からは、ウォータースライダーを男性が滑り降りる様子を、プールサイドで眺める金氏らの姿が確認できた。水しぶきが上がり、ジュエ氏が思わず驚く様子も映っていた。

同地区では、今月1日から北朝鮮住民向けにサービスを開始。その後、7日からは外国人観光客の受け入れも始まり、ロシアから団体ツアー客が訪れた。12日にはロシアのラブロフ外相が現地を訪れ、「素晴らしい観光地」と称賛した。

金総書記の肝いりの同地区の整備事業には巨額の予算が投じられたとされる。採算を取るためにも外貨獲得が期待できる外国人観光客の受け入れは不可欠とみられ、金氏も「世界的な観光地として魅力を示すことになる」と述べていた。

しかし、北朝鮮は16日、突如として外国人観光客の受け入れ中断を発表した。理由は明らかにしていないが、想定よりも外国人観光客の需要が低調だったことや、外国人が現地を訪れることで北朝鮮の内実が外部に知られることを懸念したとの見方が広がっている。

北朝鮮では、一部の住民を除き、国内を自由に移動することは厳しく制限されている。そのため、同地区のリゾート運営を軌道に乗せるためには外国人頼みにならざるを得ないのが現実であろう。このまま受け入れ中断が長引けば、金総書記が威信をかけて開業にこぎつけた同地区が破綻する日もそう遠くはなさそうだ。
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