ただし、過度に不安視する必要はない。米国もまた、自国消費者の福利が損なわれるという負担(すなわち価格上昇)を抱えながら関税交渉に臨んでいるからである。米韓両国の間には、互恵的な接点を見出す余地が明確に存在する。
トランプ政権2期目の通商政策は、「米国優先」の旗印のもと、貿易赤字の削減を第一の目標としている。さらに、海外企業による米国内直接投資および生産を促進し、雇用拡大と経済成長を図る構想も掲げている。そのため、これまで「効率性」を基軸に構築されてきた国際貿易ネットワークを、ある程度再構築する意図がある。第一の標的が中国であるならば、その次に狙われるのは、韓国や日本といった輸出主導国家であるのは当然の流れである。
注目すべきは、関税もまた税金の一種であるという点である。米国の消費者にとっては、韓国製品を関税分だけ高く支払って購入せねばならず、これはいわゆる「消費者福利の減少」につながる。
そもそも、自由貿易体制の中で最も大きな恩恵を受けたのは、米国の消費者であった。彼らの旺盛な消費を支えてきたのは、2001年にWTOへ加盟した中国であり、その結果として低インフレの下でも「持続的成長」が可能となった。すなわち、自由貿易の最大の受益者は、米国である。
米国との関税交渉を前に、韓国政府が抱える最大の懸念は「米国側に差し出すべき明確なカードが見当たらない」ことである。防衛費の増額や農産物市場の追加開放といった案が提示され得るものの、トランプ大統領がこれらを受け入れるかどうかは不透明である。
しかしながら、韓国はすでに少なからぬ譲歩を行っている。しかも、それらは米国経済に有利な方向でなされている。皮肉なことに、対米貿易黒字こそがその証左である。トランプ大統領が「不公正貿易」の根拠として韓国を非難する主要な根拠でもある。
2024年4月、韓国産業研究院が発刊した『韓国の対米輸出の構造的分析』によれば、近年の韓国の対米貿易黒字は、米国の製造業と韓国企業との連携によって生じた、いわば必然的な結果である。すなわち、韓国企業が米国内の製造業の成長を助けたことで生まれた黒字なのである。
同レポートによると、対米貿易収支は2020年の166億ドルから2022年には280億ドル、そして2024年には560億ドルへと急増している。さらに詳しく見ると、韓国企業が米国内に工場を建設・運営する過程において使用された機械設備などの資本財や、中間財の輸出が多く含まれていることが分かる。これはバイデン政権時に米国側が韓国企業に求めた投資に、韓国が積極的に応じた結果である。
要するに、韓国企業の対米投資の活発化によって、「韓国製産業財の調達 → 中間財・資本財の輸出増加 → 韓米製造業の連携強化」という流れが生まれたということである。今後、工場の完成とともに米国内の原材料調達が増加すれば、現在の対米黒字幅も自ずと縮小するであろう。
事実、現代自動車は2025年3月までに総額210億ドル規模の対米投資計画を発表している。LGエナジーソリューションはGMと共同で、ミシガン州のバッテリー工場を20億ドルで買収したという。これはむしろ米国にとって有益な対米黒字であるにもかかわらず、韓国に対する圧力の道具として利用されているのは皮肉である。
それでも韓国には、数千年にわたり大国の狭間で外交によって難局を乗り越えてきた経験がある。現代の韓国もまた、決して侮れる存在ではない。米国が絶対的に有利であるわけでもなければ、韓国が一方的に不利というわけでもない。米国もまた、自らの要求が100%受け入れられるとは考えていないであろう。なぜなら、それは自国消費者の福利に悪影響を及ぼしかねないからである。
したがって、両国にとって適切な妥協点を見出すことが必要であり、それは大局的に見れば決して困難なことではない。現時点で明確な答えを出すのは難しいにせよ、相互互恵の観点から合意に至る可能性は十分にあると判断される。
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