<W解説>最近、北朝鮮でロシア文化を紹介する番組が増えた理由
<W解説>最近、北朝鮮でロシア文化を紹介する番組が増えた理由
韓国の通信社、聯合ニュースが今月5日に報じたところによると、このところ、北朝鮮でロシアの文化を紹介するテレビ番組が増えているという。専門家は聯合の取材に、背景の一つとして、Kコンテンツ(韓国のコンテンツ)が北朝鮮に流入するのを遮断するための代替措置でロシアの文化を活用しているとの見方を示している。北朝鮮では、K-POPなどの韓国文化を流布すると最高で死刑が科されるとされ、当局は文化面での統制を強めている。

聯合によると、北朝鮮の国営、朝鮮中央テレビはこの1年間(2024年7月2日~2025年3月)に、海外文化を紹介する番組「国際生活」を105編放送した。このうち、タイトルに「ロシア」のワードが入ったものは計35編(再放送含む)あり、全体の3分の1を占めた。「ロシア」のワードはないものの、「バイカル湖」など、ロシアの観光名所を扱った番組なども含めると、40編余りがロシアに関する番組という。「ロシア」のワードが入った35編は「工芸品を発展させているロシアの人々」「ロシアの伝統的な茶の祝祭」「ロシアの様々な地域を訪ねて」「文化遺産を大切にしているロシアの人々」など内容は多岐にわたる。

北朝鮮とロシアは昨年、どちらか一方が戦争状態になった際、軍事的な援助を提供することなどを明記した「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結した。昨年6月、ロシアのプーチン大統領が24年ぶりに北朝鮮を訪れ、北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)総書記と会談した際に締結した。北朝鮮の朝鮮労働党中央軍事委員会は今年4月、ロシアによるウクライナ侵攻を支援するため、金氏の命令でロシアに北朝鮮軍兵を派兵し、ウクライナとの戦闘に参加していることを認めた。同委員会の当時の声明では、北朝鮮兵が「大きな貢献をした」と主張。また、派兵は同条約の第4条に基づくものだとした。第4条には、「どちらか一方が武力侵攻を受け、戦争状態になった場合、遅滞なく保有する全ての手段で軍事的及びその他の援助を提供する」と明記されている。ロシア政府も同様に、北朝鮮軍兵士がロシアに派兵され、西部のクルスク州の奪還作戦に参加したことを認めている。ロシアが北朝鮮とこの条約を締結した背景には、ウクライナへの軍事侵攻が長期化する中、条約によって北朝鮮との軍事協力を拡大させたい思惑があったとみられている。一方、北朝鮮としては、兵力を提供する見返りに、最新の軍事技術をロシア側から得たい思惑があったとみられている。

先月29日、首都・ピョンヤン(平壌)では「包括的戦略パートナーシップ条約」が締結されてから1年になるのを記念して、ロシアと北朝鮮の芸術団による公演が行われた。ロシアの芸術団は、伝統舞踊や朝鮮半島の民謡「アリラン」の歌唱などを披露。北朝鮮側の公演の際には、歌手による兵士をたたえる歌に合わせて、ステージ後方のスクリーンに、ロシアと北朝鮮の旗を掲げる兵士たちの姿が映し出された。金総書記はロシアのリュビモワ文化相らと観覧した。

両氏は同日、会談し、軍自分野以外でも協力を強化していくことを確認した。金総書記は「文化・芸術分野の交流は、国民間の相互理解と絆を強化する上で大きく作用する」と述べた。また、リュビモワ氏はこの日、北朝鮮の文化相と2027年までの文化協力計画書に調印したという。

北朝鮮で放送されるロシア文化を紹介する番組は、昨年6月の「包括的戦略パートナーシップ条約」締結以降、増加傾向にあり、番組の増加は単純に、ロ朝の文化交流だけが目的とは言い難い。聯合が伝えたところによると、専門家は増加の背景について、多くの死傷者を出したウクライナ戦争地へのロシア軍兵士の派兵に対する内部の不満や反感を和らげるためとの見方を示した。また、聯合は「北朝鮮が韓流の拡散を遮断しようと、代替措置としてロシア文化を活用している可能性も考えられる」と指摘した。北朝鮮当局は韓国文化の影響力に神経をとがらせているとされる。韓流コンテンツを「人民の精神をむしばむ社会主義の敵」とみなす金正恩政権は2020年、韓国の音楽やドラマに触れたり、広めたりした人を罰する反動思想文化排撃法を作った。朝日新聞が今月4日に報じたところによると、北朝鮮の人権状況を調べる国連特別報告者のエリザベス・サルモン氏は2日、同紙のインタビューに応じ、韓国の音楽などを流布した者には長期の拘禁刑のほか、死刑が科されることもあると指摘した。

韓国の音楽やドラマなどを通じて資本主義社会の文化が北朝鮮の住民の生活に流入することは、回りまわって体制崩壊につながる可能性もあり、金正恩政権は、そうした芽をあらかじめ摘もうとしているものとみられている。

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