慰安婦問題を象徴する像をめぐっては、元慰安婦らを支援する韓国の市民団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯」(正義連)が2011年12月にソウルの日本大使館前に設置して以降、世界各国に広がった。公有地に建造物を設置することは韓国の法律に反するのみならず、日本大使館前の設置は外交公館の威厳や機能を保証するウィーン条約にも違反する。このため、日本政府は像が日本大使館前に設置されたことに当時から遺憾の意を表し、これまでも繰り返し韓国政府に撤去を求めてきたが、像は現在も存続している。韓国政府の調査では、韓国内に設置の慰安婦像は150を超えることが分かっている。ただ、像をめぐっては、正義連が像の周囲で日本政府への抗議活動を続ける一方、近年は韓国の保守団体がこれに対抗する形で撤去を求める声を上げている。
同様の像は韓国内のみならず、米国やドイツ、イタリアなど韓国外にも現地の韓国系の市民団体が設置した。韓国外で初めて設置されたのは13年7月の米西部カリフォルニア州グレンデール市。産経新聞の報道によると、設置の動きは2010年代に米国で活発化し、20年代にはドイツなど欧州に移行しつつあるという。
今回、博物館の敷地で慰安婦像が恒久設置されることが決まったドイツには、2017年3月に南部バイエルン州ウィーゼントの公園に初めて設置されたとされる。ドイツには現在、5体の慰安婦像があるとみられ、このうち、ベルリンのミッテ区には、現地の韓国系市民団体「コリア協議会」が中心となり、2020年9月に同協議会の事務局そばの区の公用地に設置した。当時、ドイツ国内は既に2体の像が設置されていたが、いずれも場所は私有地だった。しかし、初めて公共の場所に設置されたことから波紋を広げた。日本政府はドイツ側に撤去を働きかけ、同年10月にミッテ区長は一旦、撤去命令を出した。しかし、同協議会は「この像は戦時下における女性への性暴力をテーマとしたもので、日本に特化したものではない」と主張。結局、区長は撤去命令を撤回した。だが、像が慰安婦問題を象徴していることは明らかで、日本政府はドイツ側に撤去を繰り返し要請している。慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的解決」を確認した2015年の日韓合意では、国際社会での非難や批判は控えると約束しており、慰安婦問題を象徴する像の第三国での設置はこうした立場とも相いれない。区は昨年9月に私有地への移転を命じたが、コリア協議会は裁判所に命令の取り消しを求める仮処分を申請。ベルリン行政裁判所がこれを認め、今年9月28日まで設置を続けることを許可した。
一方、同国のケルンにある博物館、ナチス記録センターの前に設置されていた慰安婦像は、前述のようにボンの女性博物館に移転され、同館で恒久設置されることになった。28日、同館で除幕式が行われた。韓国の通信社・聯合ニュースの報道によると、同館の館長は「平和の少女像(慰安婦像の別称)は我々の博物館にとって重要な象徴であり、その名前だけでも意味が大きい」と述べた。だが、産経新聞によると、像とともに設置された碑文には「日本軍が大勢の女性や少女を誘拐し、性奴隷になるよう強いた」と記されている。日本政府は「日本軍による慰安婦の強制連行はなかった」との立場で、今回、ボンの博物館にこうした像が恒久設置されることになったことについて、岩屋毅外相は27日、「わが国政府の立場やこれまでの取り組みと相いれない。極めて残念なことだ」と懸念を示した。
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