金総書記は、昨年1月の最高人民会議(国会に相当)での演説で、韓国について「第1の敵対国、不変の主敵」と憲法に明記する必要性を強調。「80年間の北南(北朝鮮と韓国)関係史に終止符を打つ」と宣言し、「軍事境界線付近にある、南北をつなぐ全てのものを徹底して断ち切る」と表明した。その後、北朝鮮軍の兵士らが昨年4月ごろから軍事境界線近くで地雷埋設作業を進めていることが確認された。南北の間に見える形で「国境」をつくるための措置との見方が韓国では広がった。そのほか、北朝鮮兵、住民の脱北を遮断する目的もあったものとみられている。DMZの北側地域に埋設された地雷の数は、数万発に上ると推定されている。また、地雷埋設作業では、地雷の爆発事故により、作業に当たっていた北朝鮮兵に多数の死傷者が出たことも分かっている。
地雷は木箱入りの物のほか、木の葉に偽装し、見分けをつきにくくしたものもあり、韓国軍合同参謀本部や韓国メディアはこれを「木の葉地雷」と表現している。昨年、通信社の聯合ニュースは「木の葉地雷」について、使われている爆薬の量は約40グラムで、一般的な対人地雷(約20グラム)と木箱地雷(約70グラム)の中間程度の威力を持つと解説した。また、韓国紙の朝鮮日報は、大きさについてスマートフォン程度と伝えた。
梅雨入りし、韓国軍合同参謀本部は22日、「北の軍が地雷を埋設した地域のうち一部はイムジンガン(臨津江)、プッカンガン(北韓江)など南北共有河川とハンガン(漢江)河口につながっている。集中豪雨が発生した場合、北側の地雷が流出し、韓国側の地域に流入する恐れがある」と懸念を示した。また、これら地域で不審な物体を発見した場合、直ちに軍部隊や警察に通報するよう呼び掛けた。
実際、過去には梅雨の大雨で、北朝鮮側から流れてきた地雷が爆発する事故が起きている。2022年7月、軍事境界線に近い韓国北部のカンウォンド・チョロン(江原道・鉄原)郡で対戦車地雷が爆発し、水害の復旧作業を行っていた男性が死亡した。地雷は土砂に紛れ込んでいたとみられている。前年の6月には、ソウル近郊の京畿道・コヤン(高陽)市内の漢江河口のチャンハン湿地で作業をしていた男性が地雷を踏んで足首を切断する事故が起きた。さらに2020年7月には、高陽市内の漢江沿いで、釣りをしていた男性が重傷を負った。国立科学捜査研究院が調べたところ、この地雷は北朝鮮軍が使用する地雷M14と判明した。M14は1955年に米国が開発した対人地雷。重量は108グラムと軽量のため、川の流れで数百キロ流されることもある。本体がプラスチックでつくられているため探知が難しく、除去が困難な地雷の一つとされている
地雷と併せ、雨の多いこの時季に、北朝鮮との関連で懸念されるのが、韓国への通知なしに行われるダムの放流だ。昨年7月、韓国は全国的に大雨となり、各地で浸水や土砂崩れなどの被害が出たが、こうした中、北朝鮮は、韓国に流れこむ臨津江の上流にあるファンガン(黄江)ダムを韓国側に事前通告することなく放流した。このダムを放流すると、下流の韓国北部・京畿道・ヨンチョン郡にあるクンナム(郡南)ダムなどの水位に影響が出る。過去には北朝鮮から韓国に流れ込む川の下流の韓国側で水位が急上昇し、被害が度々出ている。韓国側は北朝鮮に対し、ダムを放流する際は事前に通告するよう求めているが、北朝鮮は近年、これに応じていない。
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