韓国のイ・ジェミョン(李在明)大統領は今月4日、首相に側近のキム・ミンソク(金民錫)「共に民主党」最高委員を指名した。金氏をめぐっては、資産や家族などに関する疑惑が指摘されており、本日24日から2日間開かれる人事聴聞会で野党が厳しく追及する見込みだ。また、李政権は23日、国防や外交をはじめとする11の省庁の長官(大臣)候補を指名した。国防部(部は省に相当)長官には非軍人のアン・ギュベ(安圭伯)氏が内定した。安氏が就任すれば、54年ぶりの民間出身の国防相となる。各長官候補は、今後、国会の人事聴聞会を経て正式に就任する。

韓国で、首相は大統領に次ぐ政権ナンバー2で、李氏が首相候補に指名した金氏はソウル市出身の61歳。ソウル大学在学中には全国学生総連合の議長を務めるなど、学生運動に身を投じた。民主化運動を率いた人物で、投獄経験もある。一方、25年ほど前には、米ニューズウィーク誌で「21世紀のリーダー100人」に選ばれ、将来の大統領候補とも言われた。李氏が立候補した前回2022年と今回6月3日に行われた大統領選挙では、李氏の選対幹部を務めた。李氏は自身の側近である金氏について「国政全般に洞察力がある」と指名理由も含め説明した。

金氏をめぐっては、5年前と比べ資産が約8億円増えたものの、申告した収入内訳の内容と合わないなど、資産に関連する疑惑や、金氏の子どもが大学入学で特別待遇を受けたとする疑惑などが指摘されている。しかし、金氏は自身をめぐる複数の疑惑について反論。16日、自身のSNSで「毎日一つずつ公に説明し、国民の皆様の判断を求めていく」とつづった。野党は金氏について、公職者にふさわしくないと批判。疑惑を追及する構えだ。

金氏は、17日にはソウル市内で海外メディア向けに記者会見した。日韓関係に言及し、「多くの曲折があったが、一貫して良好な関係を維持してきた」と述べた。会見では、「20~30年の交流がある友人」として河野太郎・元外相や長島昭久・首相補佐官らの名前を挙げ、「韓日関係の未来を共に議論してきた」と話した。しかし、金氏は反日的言動が目立つ人物としても知られる。ムン・ジェイン(文在寅)政権では、日本による半導体素材の輸出規制措置に対抗して韓国政府が設置した「日本経済侵略対策特別委員会」の副委員長を務めた。当時金氏は「安倍(晋三)政権が経済戦争を中断し、歴史問題について謝罪しなければ東京五輪をボイコットすることになるだろう」と主張した。

李氏は首相候補などの指名に続き、23日には閣僚候補を発表した。国防部長官候補に指名されたアン氏は非軍人出身。与党「共に民主党」所属の議員で、現在5期目のベテラン。党の事務総長や最高委員などを務め、国会では国防委員長を歴任した。ユン・ソギョル(尹錫悦)前政権では、尹氏の「非常戒厳」の宣言に軍が関わったことから、軍に対してシビリアンコントロール(文民統制)の強化を求める声が出ていた。大統領室はアン氏を指名した理由について「国会国防委員会で幹事や委員長を務めるなど軍事政策に精通しており、非軍人出身として軍の改革を主導する役割が期待される」と説明している。

外交部長官にはチョ・ヒョン氏が指名された。チョ氏は文政権で外交部第2次官、第1次官を務めた外交官だ。日韓自由貿易協定(FTA)交渉にも関わった。インド大使や駐国連大使などを歴任しており、公共放送KBSはチョ氏を指名した李氏の狙いについて「長年にわたる国際交渉の経験が評価されている」と解説した。

このほか、23日には、科学技術情報通信部や環境部、女性家族部など11の省庁の長官候補が発表された。首相を除く閣僚は就任にあたって国会の承認は必要ないが、国会で議員からの質問などを受ける人事聴聞会で審査される。首相候補の金氏の人事聴聞会は本日24日から2日間行われる。通信社の聯合ニュースは「与野党は聴聞会で金氏の資産、家族などに関する疑惑をめぐり激しく口論することが予想される」と伝えた。
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