事故は21日に発生。この日の進水式で披露されることになっていた駆逐艦が移動中に台車のバランスが崩れ、船尾部分が先に海へ滑り出し、横転した。事故の後、英国に拠点を置く非営利の調査機関「オープン・ソース・センター」は、清津の造船所で先月22日に撮影された衛星画像を公開。画像からは、駆逐艦の船体の一部が岸壁に引っかかった状態で横倒しになり、水に浸かっている様子が確認できた。船体は当時、大量のブルーシートで覆われていた。また、米国のシンクタンクの戦略国際問題研究所も同様の衛星写真を公開。同研究所は、事故を起こした駆逐艦を製造した清津の造船所が主に手掛けているのは貨物船や漁船だと指摘し、大型艦の製造や進水に関する専門技術には乏しかったと推測した。
国威を示そうとしていた大型艦が横転する事故が起こり、メンツをつぶされた形の金総書記は、「不注意と無責任さ、非科学的な経験主義によって起こった」と非難し、設計に関与した関係者などの責任を追及するよう指示した。また、金総書記がトップを務める朝鮮労働党の中央軍事委員会も当時、「責任者の罪は絶対にうやむやにできない」とした。
北朝鮮メディアによると、当局は、清津造船所のカン・ジョンチョル主任技師、船体建造作業所のハン・ギョンハク責任者、キム・ヨンハク行政担当副部長、朝鮮労働党の軍需工業部のリ・ヒョンソン副部長を拘束した。また、同造船所のホン・ギルホ所長は司法機関に出頭した。
金総書記は、今月下旬に予定されている朝鮮労働党の中央委員会総会までに駆逐艦を修復するよう指示を出したため、修復作業は急ピッチで行われた。そして、今月6日の朝鮮労働党の機関紙、労働新聞などは「今月初めに船体を直立の状態に戻すことに成功し、5日午後までに進水させ、埠頭に係留させた」と伝えた。
朝鮮中央通信によると、12日、改めて進水式が行われた。出席した金総書記は「事故の発生から約2週間で艦（船舶）を安全に立て直して水に浮かべ、計画通り党中央委員会総会を前に完全な復旧を終えた」と述べた。また、金総書記は、事故の収拾作業を担当した造船所の作業班長が殉職したとし、遺族に「社会主義愛国犠牲証」を授与する考えを明らかにした。
一方、米国の北朝鮮専門メディアNKニュースによると、朝鮮中央テレビが13日に2回目の進水式を報じた際、金総書記が3月に造船所を訪れ艦船建造事業を現地指導した画像を再公開したが、3月の放送時には写っていた金明植海軍司令官と、清津造船所のホン・ギルホ所長の姿が削除されていた。前述のように、ホン氏は事故後、司法機関に出頭している。韓国紙の中央日報は「北朝鮮は金明植氏の処罰の事実を公開していないが、前日の進水式で海軍司令官がパク・グァンソプ氏に交代しているのが確認されており、やはり駆逐艦事故の責任を問われたものと推測される」と伝えた。NKニュースは、北朝鮮が特定の幹部をメディアから削除するのは、かつて金正恩体制の実質的ナンバー2で、2013年に処刑されたチャン・ソンテク（張成沢）氏以降なかったとし、2人が職責から永久追放されたか、懲役刑あるいは処刑といった処罰を受けた可能性があると指摘した。
進水事故をめぐっては、最高指導者の金総書記が当時、「犯罪的行為」との表現を使って激怒したことから、関係者には重い処罰が下る可能性が指摘されていた。北朝鮮では昨年7月、中国との国境に近いピョンアンプクト（平安北道）シニジュ（新義州）などが深刻な豪雨に見舞われたが、金氏は同月末に開かれた朝鮮労働党中央委員会政治局の非常拡大会議で、「党や国が与えた責任のある職務を怠ったことで容認できない人命被害を発生させた者については、厳しく処罰する」と述べた。その後、9月に韓国の放送局、TV朝鮮が韓国政府当局者の話として伝えたところによると、被災地の幹部20～30人が一斉に銃殺されたという。
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