国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁の履行状況を監視する「多国間制裁監視チーム(MSMT)」は先月29日、初の報告書を公表した。報告書は北朝鮮とロシアの軍事協力に焦点を当てており、ロシアによるウクライナ侵攻をめぐり、北朝鮮からロシアに少なくとも100発の弾道ミサイルが供与されたと指摘。また、昨年、1万1000人を超える北朝鮮兵士がロシアに派遣され、最近、3000人が追加で送られたと報告している。3年以上にわたりウクライナを侵攻するロシアに対し、北朝鮮が行ってきた支援の実態が明らかになったが、北朝鮮は、報告書は偏向していると非難。ロシアとの軍事協力は「主権の正当な行使だ」と主張している。

MSMTは、国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁の履行状況を監視する国連安全保障理事会の専門家パネルが2024年4月に解散したことを受け、日米韓など11か国が同年10月に設立した。

MSMTは今回、初めて報告書を公表。それによると、北朝鮮は2023年9月以降、ロシアにコンテナ2万個以上の砲弾やロケット弾、対戦車武器などの軍需物資を供給した。また、報告書は、供給されたミサイルについて、「ウクライナに撃ち込まれて民間インフラを破壊し、キーウやザボリージャといった人口密集地域に恐怖をもたらした」と指摘。北朝鮮は供給の見返りに、ロシアから弾道ミサイルの実戦使用データや防空システム、電子戦装備などを受け取り、自国の兵器開発や軍備増強につなげているとした。

両国とも、北朝鮮からロシアへの武器の供与は否定しているが、昨年6月、ロ朝はどちらか一方が戦争状態になった際、軍事的な援助を提供することなどを明記した「包括的戦略パートナーシップ条約」を交わしている。同月、ロシアのプーチン大統領が24年ぶりに北朝鮮を訪れた際、北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)総書記との間でこれに署名した。ロシアが北朝鮮とこの条約を締結した背景には、ウクライナへの軍事侵攻が長期化する中、条約によって北朝鮮との軍事協力を拡大させたい思惑があったとみられている。

MSMTの報告書は、北朝鮮が兵士をロシアに派遣し、ウクライナ侵攻を支援しているとも指摘した。北朝鮮兵のロシア派兵については、昨年10月頃から世界のメディアで報道されたが、ロシア政府は当初これを否定。しかし、今年4月、北朝鮮軍兵士がロシアに派兵され、クルスク州の奪還作戦に参加していることを初めて認めた。ロシア軍のゲラシモフ参謀総長は当時、プーチン大統領とのテレビ会議の中で「北朝鮮軍がクルスク州の解放に貢献し、高い専門性と勇気を示した」と評価した。北朝鮮も同月、兵士が金総書記の命令でロシアに送られ、ウクライナとの戦闘に参加していることを認めた。当時の北朝鮮の朝鮮中央通信は、北朝鮮兵のクルスク州での戦闘に際し、金総書記は「祖国の名誉の代表者たち」と特別に強調したと伝えた。

今回、MSMTが初めて公開した報告書について、韓国外交部(外務省に相当)は「これまで推測と状況だけで伝えられてきた北の武器移転の内幕を具体的に明らかにしたという点で意味がある」と評価。「北とロシアの軍事協力の違法性と不当性に対して国際社会の注意を喚起し、警戒心を呼び起こすことに寄与するだろう」とした。

報告書はMSMT参加国が提供した情報を基に作成され、英国に拠点を置く非営利団体のオープン・ソース・センター、同国の調査団体、紛争兵器研究所から寄せられた証拠も一部引用された。

一方、北朝鮮の朝鮮中央通信は2日、外務省対外対策室長が談話を発表し、MSMTについて、「存在の名分と目的においていかなる違法性もない幽霊集団だ」と非難したと報じた。また、室長はロシアとの軍事協力について、個別的・集団的自衛権を規定した国連憲章第51条と、ロ朝間で交わした前述の包括的戦略パートナーシップ条約を挙げ「合法的な主権の行使だ」と強調した。

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