今回の大統領選は、昨年12月に「非常戒厳」を宣言したユン・ソギョル(尹錫悦)前大統領が罷免されたことに伴い実施された。主要候補者では、李氏のほか、保守系から「国民の力」のキム・ムンス氏、「改革新党」のイ・ジュンソク氏が立候補していた。「非常戒厳」を宣言した尹政権への評価が最大の争点となり、李在明氏は「非常戒厳」を宣言した尹前大統領を擁護した「国民の力」を「内乱勢力」と位置づけ、選挙期間中、「憲法秩序を崩壊しようとした内乱勢力を審判する選挙だ」と強調。「国民に銃口を向ける軍事クーデターが繰り返されない国をつくる」と訴えた。
3日、投開票が行われ、李在明氏が1728万7513票(得票率49.42%)を獲得して当選を果たした。キム氏は1439万5639票、李俊錫氏は291万7523票を得たが、及ばなかった。
今回の大統領選について、聯合ニュースは「韓国大統領選で、有権者は尹錫悦前大統領の『非常戒厳』宣言後続いた混乱の責任を問うた」とし、「3年前の2022年に実施された大統領選で革新系のムン・ジェイン(文在寅)政権を審判して保守系の尹政権を発足させたが、非常戒厳に対する免罪符は与えなかった」と指摘した。
通常であれば、新大統領は約2か月間の引継ぎ期間を経て就任するが、今回は任期満了に伴う大統領選ではないため、李在明氏は、選挙管理委員会が選挙結果を確定させたことを受け、4日、任期をスタートさせた。李氏は同日、就任式に臨み、就任宣誓を行った。その後の国民向けのメッセージで、「分断の政治を終える大統領になる。国民の統合をエンジンとして、この危機を克服していく」と決意を示した。
李氏の大統領就任に伴い、革新系の「共に民主党」は3年ぶりに与党に復帰した。同党は国会(定数300)で過半数の171議席を占めており、尹前政権では多数野党だった。公共放送KBSは「李在明大統領による新政権は、国会で圧倒的多数を占める『共に民主党』が支える『与党優勢・野党劣勢』の構図となる見通し」と指摘。「主な法案や人事に迅速に取り組める環境が整い、初期の国政運営に弾みがつくと予想される」と伝えた。また、聯合ニュースは「李氏の勝利により、国会(定数300)で過半数を占める『共に民主党』は行政権力まで手にした。171議席を持つ『共に民主党』は革新系野党と手を組めば約190議席を確保でき、李氏は尹氏の拒否権行使で頓挫した立法課題を解決できる」と解説した。
一方、「国民の力」は、尹前大統領による「非常戒厳」宣言が影響して、中道層や一部の保守層の支持を失うこととなり、大統領選で、同党から出馬したキム・ムンス氏は苦戦した。キム氏は、各世論調査で支持率トップを終始維持してきた李在明氏を念頭に、「怪物総統の独裁を防ぎ、自由民主主義と法治主義、市場経済、韓米同盟を守ることができる最後の機会」と訴え、自身への投票を呼び掛けたが、敗れた。キム氏は選挙対策委員会の解散式で、「私は本当に歴史的な罪を犯したと思う。国民と党員同志たちに謝罪を申し上げる」と頭を下げた。
野党に転落した「国民の力」内からは、尹前政権で政権運営に失敗した勢力の退陣や世代交代など、全面的な刷新を求める声が上がっている。今年4月、政界を引退した南東部・テグ(大邱)市の前市長、ホン・ジュンピョ氏は4日、SNSで「彼ら(国民の力)は私欲にまみれた利益集団に変わってしまったため、国民から背を向けられたのだ」と所属していた同党を批判。「地方選挙を控え、この党は消滅するかもしれないとみている」と懸念を示した。
一方、李大統領は4日、与野党の代表らと昼食会を開き、政治力の結集を呼び掛けた。李氏は「政治が国民の困難を解消し、国民を一つにまとめる本来の役割を果たさなければならない」とした上で、「譲歩するところは譲歩し、妥協するところは妥協し、なるべく皆が同意する政策で国民がより良く暮らせるようになることを心から願う。敵対と戦争のような政治ではなく、互いに対話して認め合い、実質的に競争する政治になることを希望する」と述べた。
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