李在明大統領(共同取材)=(聯合ニュース)
李在明大統領(共同取材)=(聯合ニュース)
【ソウル聯合ニュース】韓国の李在明(イ・ジェミョン)政権の外交安保政策は一言で言えば「実用」となる。 

 李在明大統領は選挙運動期間中に実用外交を展開すると表明してきた。「価値」を外交の中心に置いた尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権とは異なり、「国益」を最優先に考え、米国はもちろん中国やロシアなどとの関係も安定的に管理するという意味だ。

 ただ、これを実現するのは容易ではない。

 米トランプ政権の関税強化策や在韓米軍駐留経費の韓国側負担額の増額要求、米中の競争激化、北朝鮮核・ミサイルの高度化、韓日の歴史問題、ウクライナ戦争など複雑に絡んだ外交・安全保障分野の懸案が李在明政権を待ち構えている。

 価値外交はあちこち目配りする必要がない点で単純だが、実用外交は国際社会で「原則のない外交」と認識される危険性があるという点で、緻密な計算の下で実行されなければならないという指摘が出ている。

◇韓米同盟・韓米日協力維持 在韓米軍駐留経費や歴史問題など難関も

 李氏は実用外交の土台は「堅固な韓米同盟」と強調してきた。韓米日協力の深化も強調しているという点で、尹政権との大きな違いはみられない。

 「新冷戦」と呼ばれるほど米中の競争が激化する中、世界の安保環境の不安定性が高まり、外交政策の急激な変化よりも大きな枠組みで政策の基調を維持しながら事案ごとに国益に焦点を合わせた選択をしていくものとみられる。

 だがトランプ政権がもたらした不透明な国際情勢の中で発足する李在明政権には一筋縄では解決できない外交課題が山積している。

 まず韓国の外交の中心である韓米関係が揺れ動く懸案が多く潜んでいる。

 米国が同盟国の防衛費引き上げを要求するメッセージを連日発信し、在韓米軍の縮小や再編を検討しているとする報道も続いている。

 韓米は昨年、2026年以降の在韓米軍の駐留経費負担を定める新たな「防衛費分担特別協定」(SMA)を締結したが、米国側が再交渉を要求するのは時間の問題との見方もで出ている。

 北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長(朝鮮労働党総書記)との親交を強調するトランプ氏が今後、米朝対話を再開した場合に韓国の立場が反映されるようにすることも急がれる課題だ。 

 北朝鮮の核保有を認めるような発言をしてきたトランプ氏が北朝鮮と「非核化」ではなく「核軍縮」交渉を進めるようなことになれば、在韓米軍の再編と相まって韓国が直面する安保脅威のレベルがさらに高まる可能性がある。 

 またトランプ政権が韓国に課すとする25%の相互関税と鉄鋼・自動車・半導体などに課す品目別関税の減免について議論する韓米の交渉は7月の合意を目指しているものの、相互関税などについて違法とする判断を示した米裁判所と政権側との攻防が激しくなり、交渉の行方が不透明な状況だ。

 1965年に国交を正常化してから今年で60年という節目の年を迎えた韓日の関係はすぐに雰囲気が変わることはなさそうだ。

 尹政権は韓日関係の最大の悪材料だった徴用訴訟問題を巡り、韓国政府傘下の財団が日本企業の賠償金支払いを肩代わりする「第三者弁済」を発表した。これに代わる案がないことから、李氏が同解決策を覆す可能性は低いとみられている。

 歴史問題と未来指向の協力を分けてアプローチするという基調は維持される見通しだが、独島の領有権主張や歴史問題などでの日本の挑発が韓日関係にどのような影響を与えるかは今後を見極める必要がある。

 朝鮮半島出身者が強制労働をさせられた新潟県の「佐渡島の金山」の労働者追悼式や、韓国と日本が済州島南沖の東シナ海海域を共同開発区域と定めた大陸棚協定の延長などの問題もある。

◇韓中関係は円満に? 米中競争激化が最大の鍵

 外交政策における前政権との違いは中国・ロシアとの関係になるとみられる。

 価値を外交の中心に置き、中ロと摩擦のあった尹政権と異なり、国益のために両国との関係も円満に管理するというのが李氏の考えだ。

 中国については、10月に南東部・慶州で開幕するアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせ習近平国家主席が来韓する可能性が高いことに加え、韓中が昨年から高官級の人的交流再開などで意思疎通してきただけに、関係を楽観視する向きが強い。

 問題は、韓国の国益に最も大きな影響を及ぼす米国が、これをどう見るかだ。

 米国の中国に対する圧力が本格化し、これに韓国が加わることを要求する声が強まるものと予想され、対中関係は李在明政権にとって最高難度の外交懸案になる懸念がある。

 米国が台湾問題などを理由に韓米日協力を強調する中、韓国が取れる行動の幅は広くないという分析もある。

 ロシアとの関係もウクライナ停戦交渉が遅々として進まない中、正常化には時間がかかるとの見方が出ている。北朝鮮とロシアの接近がさらに顕著になれば、韓国のロシアへの接近も限界がある。

 外交部傘下のシンクタンク、国立外交院のミン・ジョンフン教授は「強固な韓米同盟を通じて朝鮮半島の安保状況を安定的に管理し、韓国に友好的な朝鮮半島周辺勢力のバランスを維持することが基本課題になるだろう」と話した。 

 また在韓米軍の運用や韓米同盟と関連して韓国が望む方向に米側の政策を誘導することが重要だと指摘した。


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