尹錫悦(ユン・ソクヨル)前政権は発足からの3年間にほぼ全ての国政分野を後退させたが、最も深刻な問題は民間経済の破綻だというのが李氏の認識だ。
李氏は革新系最大野党だった「共に民主党」の代表時代から「モクサニズム(よく食べ、よく生きる)」を基調に国民の生活問題の解決を優先すると強調してきた。
4月10日に大統領選への出馬を表明した際も、国政の最初の目標は経済成長だと明確に打ち出した。
李氏は当時、「われわれの経済は四面楚歌のような状態」とし、「政府の役割が重要だが、この3年間政府は経済を放置した」と批判した。
先月25日の記者会見でも「私が国民の選択を受けることになれば、真っ先に大統領が指揮する『非常経済対応TF(タスクフォース)』を構成する」と述べた。
国民経済の回復を担う首相や経済副首相などの人選に時間を要するという理由もあるが、大統領当選者が自ら乗り出さなければならないほど経済状況が深刻だという認識があるためだ。
このため、李氏は就任直後に30兆ウォン(約3兆1180億円)以上の規模で内需拡大補正予算を編成する見通しだ。
先月閣議決定された13兆8000億ウォンの補正予算は山火事被害の復旧など応急処置的な性格だったが、今回は国の予算を使ってでも内需を活性化しなければならないとの趣旨だ。
こうして金を行き渡らせ、株式市場を活性化させることで、長期的には持続可能な成長につなげるというもくろみがある。
国民生活の改善と経済の回復が最優先ではあるが、既存の支持層が求める「内乱の克服」も大統領室主導で進めるべき課題だというのが大方の分析だ。
尹前大統領の「非常戒厳」宣言を発端とする内乱の克服過程が政治報復に悪用される恐れがあるとの懸念もあるが、李氏はこのような見方によって内乱行為を正当化することはできないとの立場とみられる。
李氏は先月31日、KBSラジオのインタビューで「重大な犯罪、国民の人権を侵害する行為などを政治という理由で許し、目をつぶることは政治ではない」と強調。違法な非常戒厳に同調し、これをかばう者は容赦しないと示唆した。
問題は、非常戒厳の違法性を解明し、これを断罪するなかで政治的対立や分裂が深刻化した場合、李氏の責任論が提起される可能性がある点だ。
このため、内乱の克服を国民の大多数が納得できる方法で推進することが李氏にとって重要な課題になるとみられる。
李氏は方法論の一つとして、特別検察官による捜査を挙げている。
検察の代わりに政府から独立して活動する特別検察官を任命し、内乱事件の捜査を任せることで、内乱克服の政治利用という見方を一定程度免れることができるためだ。
このような点を踏まえると、李氏は就任に伴い、尹前大統領と大統領権限代行が先送りしてきた特別検察官候補者の推薦を早急に行う可能性もある。
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