支持層の結集を最大化し、中道層を取り込んで勝機をつかむという基本戦略の下、対立候補に対するネガティブキャンペーンも過熱する様相を帯びている。
大統領選候補の支持率などの世論調査結果の公表が禁止された先月28日より前の調査でリードを維持した李在明氏を金氏と李俊錫氏が追い上げを図り、逆転を狙っている。
◇李在明氏「内乱審判」、 金文洙氏「独裁阻止」、李俊錫氏「40代の旗手」
李在明氏は、今回の大統領選が尹錫悦前大統領の「非常戒厳宣言」に端を発したという点を際立たせ、選挙終盤まで「内乱審判」を前面に出している。支持層をしっかりと固めるための意図があるとみられる。
「住宅価格安定に税金は使わない」「総合株価指数(KOSPI)5000達成」など国民の生活や経済問題にも集中している。
昨年12月の尹氏の非常戒厳宣言から弾劾、大統領選へと続く状況が有権者に政治的疲労感を与えたとの判断の下、中道層に訴求力が高い政策を強調する一方、「準備が整った指導者」という面をアピールすることで李氏をけん制する候補たちと差別化を図っている。
金氏は「反李在明」を前面に掲げ、保守層の結集と中道層の取り込みに総力をあげている。
自身の清廉性を際立たせると同時に李在明氏の「司法リスク」に集中的にスポットが当たるようにすることで、有権者の李在明氏に対する反感をあおっている。
また、李在明氏が当選すれば「怪物独裁国家」「総統国家」が出現する可能性があるというメッセージを通じて「独裁阻止」も掲げている。
李俊錫氏は旧世代の政治家と差別化した「若さ」を前面に押し出した「40代旗手論」で若者層を集中的に攻略すると同時に、李在明氏を「混乱勢力」、金氏を「内乱勢力」と位置づけ、両氏を攻撃している。
◇過熱するネガティブキャンペーンの影響に注目
3氏と各陣営のネガティブキャンペーンも過熱している。検証と反論が容易ではない短期決戦ではネガティブキャンペーンが対立候補の得票力に打撃を与える手っ取り早い方法だ。
李俊錫氏は先月27日行われた大統領選の主要候補による3回目のテレビ討論会で、李在明氏の長男が過去にインターネット掲示板に書き込んだとされる女性の身体に対する暴力的な表現に言及し、李在明氏に謝罪を求めながら攻勢をかけた。
李在明氏は同30日、長男の過去の書き込みについて「私のしつけが悪かった」と述べた上で、李俊錫氏が書き込みの内容を誇張・歪曲(わいきょく)したと主張した。共に民主党は討論会翌日の28日に李俊錫氏を公職選挙法違反容疑でソウル警察庁に告発した。
盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権で閣僚の保健福祉部長官を務めた共に民主党寄りの柳時敏(ユ・シミン)氏が、金氏の妻、ソル・ナニョン氏に対し行った発言も問題となっている。柳氏は28日にユーチューブで、ソル氏の人生では有力な政党の大統領候補の配偶者になることはあり得ないという趣旨の発言をし、波紋が広がった。
共に民主党はこの発言の影響を最小限にとどめるため「選挙対策委員会はもちろん、民主進歩のスピーカーは発言に慎重を期すべきだ」と指摘した。柳氏は「表現が荒かったのは私が悪かった」とし、階級主義や女性蔑視などに関する発言やそのような趣旨の発言はしていないと釈明した。
国民の力は李俊錫氏と柳氏の発言が逆転の足掛かりになると期待しながら、残りの選挙運動期間に攻勢を強める方針だ。同党は李在明氏の長男が過去に違法賭博を行ったときの資金の出所を明らかにすべきだとして検察に告発した。
◇保守系候補の一本化は困難に 最大野党は警戒緩めず
金氏と李俊錫氏による保守系候補の一本化の可能性は、李氏が「第3勢力」として最後まで戦う姿勢を示したため消滅した。
国民の力は「投票を通じた一本化」を訴え、保守陣営を結束させる戦略だ。「現在は金文洙、未来は李俊錫」を強調し、保守分裂で敗北した場合の責任は李氏にあることを示す意図がある。
一方、李俊錫氏は「未来のためには私を選択してほしい」と訴え、対抗している。
共に民主党は保守系候補の一本化が李在明氏の勝利の可能性を脅かすほどではないと判断しつつも、選挙日直前に一本化が実現する可能性に対する警戒を緩めていない。同党は金氏と李俊錫氏が「選挙当日の投票開始前までに一本化する」と主張している。これは李在明氏の支持者を投票所に向かわせるための戦略とみられる。
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