李氏をめぐっては、これまで反日的な行動や発言が目立った。ソウル近郊のソンナム(城城)市長を務めていた2016年には、前年に日韓で交わした慰安婦問題に関する合意に抗議するため、ソウルの日本大使館前で座り込み運動に参加した。ソウル近郊のキョンンギド(京畿道)知事在任中には、「親日残滓(ざんし)清算プロジェクト」を推進。京畿道内の教育現場における親日・日帝残滓の清算を行った。2022年の前回大統領選に出馬した際には日本に対し、強硬的な発言を繰り返した。尹前政権が発足すると、政権を「親日売国政権」とレッテルを貼り、批判を続けた。一昨年8月、日本政府が福島第一原発の処理水の海洋放出に踏み切るや、「汚染水テロ」「第2の太平洋戦争」だとして反日を扇動。自らは抗議のためハンガーストライキを行った。
2度目の大統領選に挑んでいる李氏だが、今回は現在まで各世論調査で候補者支持率トップを独走している。公約では、人工知能(AI)やコンテンツ産業、防衛産業などの成長産業を確立することで経済大国を実現すると強調。今月18日に大統領選の主要候補者4人が出席したテレビ討論会でも、「自営業の売り上げが減っており、短期的には補正予算で庶民景気と内需を生かすことが重要だ」との考えを示した上で、「成長なくして分配はない。長期的にはAIや再生可能エネルギー産業を育成し、成長動力を取り戻す」と述べた。
また、外交に関しては、国益を最優先する「実用主義」を主張している。先月15日に公開した動画では「韓米同盟を尊重し、韓日米3か国の協力体制をしっかり構築しつつ、ロシアや中国との関係も適切に管理する必要がある」と語った。また、李氏の外交・安全保障・通商分野の参謀のキム・ヒョンジョン元国家安保室第2次長は今月8日(現地時間)、李氏の外交安保補佐官として米ワシントンを訪れ、トランプ政権の当局者らと会合を開いた。大統領選候補の参謀が米政府の関係者と接触するのは異例のことだ。キム氏はホワイトハウス訪問を終えた後、記者団の取材に応じ、「韓米同盟は非常に重要であり、できるだけ強化・アップグレードしなければならず、韓米日の協力関係も強化する必要があるというのが李氏の立場であることを強調した」と説明した。また、キム氏は日韓関係について、個人的な表現と前置きした上で「韓日は日本の長州藩と薩摩藩が(江戸幕府倒幕のために)協力したレベルで協力する必要があると思う」と述べた。側近のキム氏の発言からも、李氏がかつての反日・反米的な性向から親日・親米的な方向に立ち位置をシフトし始めた様子がうかがえる。
今月20日、李氏はSNSに投稿した動画で日韓関係について言及。この中で李氏は「私が日本に対して敵対的だろうという先入観がある」と指摘した上で、韓国が領有権を主張する島根県の竹島(韓国名・独島)などに触れ「歴史問題や独島問題は強硬にならざるを得ないが、文化交流や韓日で協力できる分野では私は積極的で開放的だ」と述べた。その上で、「私は日本の国民に対してとても好感を持っている。日本には旅行で何度か行ったが、本当に謙虚で優しく、一生懸命で質素で学ぶことが多い国民だ」とも語った。
李氏のこの発言を伝えた日本メディアは「政権交代を見据え、反日のイメージを払しょくし、尹錫悦政権が進めた日韓協力の継続をアピールする狙いがあるとみられる」(産経新聞)、「選挙まで残り2週間となる中、円滑な外交を進めていく姿勢をアピールするねらいがあるとみられる」(NHK)などと分析した。
一方、李氏は、今月13日に行われた南東部テグ(大邱)市での演説で、韓国語に堪能でない日本人の韓国語の発音を真似て、「日本大使にカムサハムニダ(ありがとうございます)と言った」と発言し、物議を醸した。日本人を揶揄したとも受け取れ、韓国紙の朝鮮日報は「相手国を見下しているという議論に広がりかねない」と指摘した。与党「国民の力」のハン・ドンフン(韓東勲)前代表は「外交問題を戯画化させる無知と軽さは嘆かわしい」と批判した。「改革新党」の大統領選候補、イ・ジュンンソク(李俊錫)議員は「(日本大使に関する発言を)あえてする必要があったのか。(李在明氏は)何が問題なのかわかっていないようだ」と非難した。
日本に好意的な発言をする一方で、支持者らが集まった演説会場では日本人を揶揄するような発言が口を突いて出る。李氏の対日観は図りかねる。
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