今回の韓国大統領選は、ユン・ソギョル(尹錫悦)前大統領が罷免(ひめん)されたことに伴い実施される。注目候補は、最大野党「共に民主党」のイ・ジェミョン(李在明)前代表、与党「国民の力」のキム・ムンス前雇用労働相、改革新党のイ・ジュンソク(李俊錫)前代表の3氏だ。世論調査機関の韓国ギャラップが今月16日に発表した世論調査の結果では、支持率は李在明氏が51%、キム・ムンス氏が29%、李俊錫氏が8%などとなっている。
こうした中、主要候補者の陣営の中で、襲撃やテロなど、不測の事態に警戒を強めているのは李在明氏の陣営だ。同党・中央選挙対策委員会のチョ・スンレ首席広報担当は11日、「李候補に対するテロの脅威が高まっている状況を受け、キム・ミンソク常任選対委員長を団長とするテロ対策対応チームをつくった」と明らかにした。同党関係者によると、党には、李氏を狙撃するためにロシアの小銃が密輸入されたとの情報提供が寄せられたという。一方、通信社の聯合ニュースによると、ある警察関係者はこの「銃器密輸入説」について、「通報があったり確認できたりした事実はない」と述べた。
李氏は暗殺やテロを防ぐためとして、遊説の際に防弾チョッキを身に着けている。チョッキの重さは3キロにもなるという。一方、李氏の対立候補、キム・ムンス前雇用労働相を擁立した与党「国民の力」からは「自らを被害者に見立てる政治的なショーだ」との批判の声が上がっている。
さらに「共に民主党」は、今週から、李氏が演説などをする際、李氏は防弾ガラスパネルの中から行うことを決めた。「共に民主党」は当初、トランプ米大統領が米大統領選の候補者だった際に銃撃された事件以降、演説会場で使用が始まった「全面防弾ガラスパネル」の製作を検討したというが、物理的、時間的問題などにより、やや小さいものになったという。韓国メディアによると、同党の中央選挙対策委員会のカン・フンシク総合状況室長は「李候補は非常に有権者に会いたがっているが、寄せられた多くの情報と支持者たちの心配のためにそれができないことについて、李候補も陣営も残念に思っている」とした上で、「候補の安全に万全を期す」と述べ、理解を求めた。
李氏は昨年1月、南部のプサン(釜山)で視察を終えて記者団の取材を受けていた際、近づいてきた男に切り付けられ、軽傷を負ったことがある。韓国ではこれ以外にも、政治家が襲撃される事件が起きており、2006年には当時、野党第一党のハンナラ党代表だったパク・クネ(朴槿恵)元大統領が、ソウル市内で地方選挙の応援演説を行っていた際、男に襲われた。朴氏はカッターナイフで切り付けられ、右頬を約60針縫う重傷を負った。朴氏は2022年3月にも南東部・テグ(大邱)の私邸前で支持者にあいさつをしていた際、群衆から焼酎瓶を投げつけられた。この際は十数人の警護員による機敏な対応によって守られ、朴氏にけがはなかった。また、同時期には、当時、「共に民主党」の代表を務めていたソン・ヨンギル氏が大統領選の応援遊説中に、男に鈍器で頭を叩かれる事件もあった。
16日の韓国警察庁の発表によると、今回の大統領選の候補者に対するインターネット上での脅迫は9件確認され、そのうち8件は李氏に対するものだった。
こうした状況に警察も警戒を強めており、警察庁は候補者への狙撃に備えた装備を遊説現場に導入した。このうち、狙撃手観測装置は1台あたり5000万ウォン(約520万円)もする高額な装備だ。さらに、高価な警護用望遠鏡も導入された。
聯合ニュースによると、警察庁の関係者は取材に「大統領選候補者に対するテロの可能性に備えている。選挙遊説現場周辺の混雑緩和、秩序維持、交通安全管理、違法行為者の即時検挙のための刑事活動など、担当警察署が全機能を集中させ、総力を挙げて対応しているところだ」と語った。
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